
こんにちは、あるいはこんばんは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。
元手術室の看護師です。現在は大学で教員をしています。
今回のテーマはアナフィラキシーショックについてです。
少しマニアックな部分でもありますが、稀に出てくる症状でもあります。
だからと言って理解していなくても良いか、対応方法を知らなくても良いかといったら違います。
そして症状が出てからしっかりと対応していくことが求められるところでもあり、活躍する機会は非常に少ないかもしれませんがいざ症状が出てきた時に動けるようにしていきましょう。
アナフィラキシーショックとは。
アナフィラキシーショックとは〝急性の全身性かつ深刻なⅠ型過敏症(抗原抗体反応)の1つ〟と言われています。
肥満細胞から化学伝達物質が放出され、血圧低下、気管支痙攣、全身紅潮という全身反応が引き起こされます。
全身麻酔中の発生頻度は
約1万例に1例とされ、死亡率は5%程度です。
1日2件手術を担当したとしても20~30年に1件あるかどうか、といった計算になります。
もしかしたら長く手術室の看護師を経験しても1度も遭遇しないまま看護師人生を終える可能性もあります。
実は私の場合はすでに1件、全身麻酔中の悪性高熱症を経験しています。
その時は悪性高熱症と思いませんでしたが、後から振り返ってみて症状などが酷似していて、思えばそうだったんだろうなと思いました。
発生原因として
・筋弛緩薬 ・ラテックス製品 ・抗菌薬 ・血液製剤 ・コロイド(代用血漿剤:HES ボルベンなど) ・造影剤 など
があります。
これらの薬剤などを使用する場合はアナフィラキシーショックが起こるかもしれないという場合を頭の片隅にでも置いておく必要があります。
原因になる薬物。
前述していますが改めて原因になる薬物を挙げていきます。
『筋弛緩薬』『抗菌薬』『造影剤』が多いと言われています。
※欧米における2003年の報告では
| 筋弛緩薬 | 58% |
| ラテックス | 17% |
| 抗菌薬 | 15% |
| コロイド | 4% |
| 鎮痛薬 | 3% |
| 麻薬 | 1% |
と言われています。
つまりは手術で使用する薬剤のほとんどでアナフィラキシーショックが起こる可能性があることを示唆しています。
アナフィラキシーショックを生じる可能性のある患者。
・野菜や果物に対して食物アレルギーを有する
・医療処置を繰り返し実施している患者(二分脊椎など)
・多数の手術を受けた患者や医療従事者
・喘息およびそれ以外の慢性呼吸器疾患
・心血管疾患
・アレルギー性鼻炎やアトピー性疾患
・β遮断薬やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などの薬剤を併用した場合
以上の場合、アナフィラキシーショックを生じる可能性が高くなってしまう要因になります。
特に一つ目にある、野菜は果物のアレルギーがある場合はアナフィラキシーショックを起こす可能性が高いということで非常に有名です。
また普段からラテックスに触れる機会の多い手術室の看護師や医師などが挙げられます。
こちらについては後ほどさらに詳しく述べていきます。
全身の症状について。
より詳しい症状については後に紹介するとして、主な全身の状態の変化について書いていきます。
・細動脈の血管拡張
・肺の細気管支の収縮
・気管支痙攣
以上の変化は、IgEと他のアナフィラキシーを起こす物質(抗菌薬や筋弛緩薬)が関与し、生体にその特異的IgE抗体に対応する抗原が反応することで起こります。
その後、好塩基球や肥満細胞がヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサン、プロスタグランジンなどの化学物質を放出します。
肥満細胞から放出された血管拡張作用のある化学物質により血管が拡張し、高度の血圧低下がみられます。
以上により、
・全身の発赤 ・眼球結膜の充血 ・口唇の腫脹 ・喉頭浮腫 ・急激な気道内圧の上昇
が生じます。
気道内圧の上昇は、高度であれば換気不全に陥り、重篤化しやすいです。
発生機序(具体的に)。
ある物資に感化される。
⇒
マクロファージが抗原を取り込み、T細胞に情報を伝える
⇒
T細胞はB細胞にIgEを作るように命じる
⇒
IgE抗体を肥満細胞(内部に化学物質を溜め込んでいる)の表面に結合させ、次の抗原の侵入を待つ
⇒
抗原が再侵入すると、肥満細胞上のIgE抗体に抗原が結合し、化学物質が放出される
・ヒスタミン ・ロイコトリエン ・キニン ・セロトニン ・トリプターゼ など
⇒
血管拡張 血管透過性亢進 浮腫
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アナフィラキシーショックは発症頻度が少ないものの、適切な処置の時期を失うと重篤な結果を招くことがある急性期疾患です。
的確な判断、迅速な治療、冷静な対応が非常に重要になっていきます。
アナフィラキシーとアナフィラキシー様反応。
結局の所〝様反応〟と付いているだけの話になりますが、似て非なるのもので、実は大きく違うという事になります。
〝様反応〟ということは、の様な反応、つまりはその様な症状が出ているということになります。
それぞれについて書いていきます。
アナフィラキシー
☆即時型(Ⅰ型)アレルギー反応☆
以前にある物質により感作されているヒトがその物質に再度暴露された時に免疫学的機序により化学伝達物質が放出され、急激かつ全身的な反応を呈する。
※蜂に刺された時は二回目の方が危ない!!
アナフィラキシー様反応
☆化学物質の放出には免疫学的機序は関与しない☆
☆以前の原因物質による感作は必要ない☆
臨床的にはアナフィラキシーと同じような症状を呈する。
初回の抗原暴露で捕体系の活性化や直接的な活性化で肥満細胞の脱顆粒が生じる。
アナフィラキシー症状。
☆呼吸器☆
咽頭のかゆみ、閉塞感、違和感、嗄声、声が出ない、乾性咳嗽、胸部絞扼感、咳嗽、鼻汁、鼻閉 など
☆皮膚・粘膜☆
発赤、蕁麻疹、口唇の発赤腫脹、眼周囲発赤・浮腫、眼球結膜充血 など
☆消化器☆
嘔気・嘔吐、腹痛、下痢 など
特徴
抗原が投与された時のみ発症し、治療に反応した後の経過では特別な症状の発現が見られない。
※抗原が投与されていないにも関わらず、数十分後から数十時間後に起こる二相性アナフィラキシーが1~20%で発現することがある。
アナフィラキシーショックは予測困難!!
アナフィラキシーショックは発生頻度が低いといったこともあり予測が非常に困難です。
しかも発症した場合、非常に重篤な事態に陥る可能性も高いです。
前述しましたが、発症後いかに迅速に対応するかで予後が決まってきます。
※アナフィラキシーショックが発症した時の対応を整理する。
※それぞれの施設での治療方針を確認する。決めておく。
※手術室のでのマニュアルを作成する。
などが挙げられます。
死亡の多くは発生初期の1~2時間に起こる。
⇒アナフィラキシーショックは発症が非常に急激であり、なおかつ気道の閉塞を伴うため喉頭の浮腫や不整脈による心停止などが起こりやすい。
呼吸と循環を緊急に改善する必要がある。
対応
・人手を集める
・原因と考えられる薬物がまだ投与されていれば即時に中止する
・血圧低下に対し、輸液や昇圧薬(ボスミンなど)を投与する
・気管支痙攣に対し気道確保を行う
・必要に応じてステロイドの投与を行う
など
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アナフィラキシーショックの重症度に対する対応。
| 症状の程度 | 血圧低下 | 気道閉塞症状 | 意識障害 |
| 軽症 | (-) | (-) | (-) |
| 中等度 | (+) | (+) | (-) |
| 重症 | (+) | (+) | (+) |
※治療はとにかくボスミン・輸液・酸素
軽症
①下肢挙上
②輸液投与:20mL/kg/hr程度で開始(例:50kgの場合1000mL/hr)
※心不全患者や高齢者の場合には適宜減量 (小児は30mL/kg)
③酸素投与:100%酸素投与(局麻ではマスクで10-15L/min)
④対症療法:必要に応じて行う
a.抗ヒスタミン薬(ポララミン)→成人5mg静注 小児2.5~5mg静注
b.ステロイド(ソル・メドトール)→5mg/kg
➄ボスミン投与:症状の改善が認められない場合に投与
a.ボスミン2Aを生食100mLに溶解し、そのうち50mLを
シリンジポンプにセットする(持続投与で使用)
b.残りの50mLをワンショット用として使用する(濃度0.02mg/mL)
→1mLから最大(体重/2)mLを静注(ボスミン0.01mg/kgに相当)
c.効果不充分な場合:2~5分おきに追加投与
中等度~重症
①ボスミン投与:〝軽症〟と同じ
②輸液投与:〝軽症〟と同じ
③酸素投与および気道確保
a.100%酸素投与(局麻ではマスクで10-15L/min)
b.気道狭窄に対して→・吸入麻酔薬(セボフルラン)、メプチンの投与
・アミノフィリン250mgを生食20mLで希釈し、10~20分かけて静注
④循環管理:
a.必要に応じて昇圧薬(エフェドリン、エホチールなど)を投与
b.血圧低下が遷延する場合→ドパミン(カタボンHi、イノバン)5~15μg/kg/min
c.それでも低下する場合→ボスミン持続0.02~0.3μg/kg/min
➄ステロイド(ソル・メドロール)5mg/kg 点滴静注 (6時間ごと投与)
⑥抗ヒスタミン薬(ポララミン)→成人5mg静注 小児2.5~5mg静注
他,ガスター(20mg 点滴静注、小児では0.4mg/kg)も考慮
⑦ボスミンに反応しない時(β遮断薬内服などによる)
グルカゴンG1mg(蒸留水で溶解)静注、もしくはプロタノール0.01~0.5μg/kg/min
⑧従来の薬剤で反応しない時→ピトレシン、メチレンブルーの投与を検討
注意点
①事前に術前訪問の際など、既往歴などについて十分な問診を行う。抗菌薬などよるアレルギー歴は必ず確認する。
②投与に関しては、必ずショックなどに対する救急処置のとれる準備をしておく。
③投与開始から投与終了後まで患者を安静にし、十分な観察を行う。特に投与開始直後は注意深く観察する。
④薬剤にショックの既往がある患者については当該薬剤の投与は禁止とする。
⑤ショック以外の過敏性の既往のある患者については当該薬剤の投与は原則禁止とするが、皮膚反応試験陰性を確認した上で慎重に投与することが許容される。
⑥アナフィラキシーショックであることの早期発見に努める。持続する難治性の血圧低下時は、アナフィラキシーショックを疑い皮膚症状などの早期発見に努める必要がある。
⑦アナフィラキシーショックは,緊急事態であることを認識し、“ただちに人を集めること”“治療薬としてボスミンを使用する”を覚えておく。
ラテックスアレルギーと悪性高熱症がある。
アナフィラキシーショックと言えばラテックスアレルギーと悪性高熱症が有名です。
こちらの方は別記事で詳しく書いています。
こちらを参考にしてみてください。
まずはアナフィラキシーショックについて基本的な部分について書いてきました。
ぜひ勉強にお役立て下さい。