【手術室看護師向け】体温について学ぼう-効果的な体温管理について

こんにちは、あるいはこんばんは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。

元手術室の看護師です。現在は大学で教員をしています。

看護師の免許がある以上、必ず出てくるのが体温です。

一番最初に触れる内容では無いでしょうか。

しかしながら意外と体温に関しては知らないことも多い気がします。

今回の記事ではその体温について少し詳しくお話をしていきます。

 

この記事で分かる事
・体温について分かる。
・手術室における体温管理について分かる。

体温は37℃?

みなさんは体温が37℃と聞いてどの様に感じますか?

〝微熱がある〟と感じる人がほとんどではないでしょうか。

中には普段から体温が高いからこれくらい平熱だ、と思う方もいると思います。

基本的に人間の体温は37℃付近に保たれています。

ヒトをはじめ恒常動物(温血動物)は地球上のかなり広い範囲で常時活動することが可能です。

これは外部環境である〝温度〟が変化しても脳のほか重要臓器の温度が一定に保たれていることで可能となります。

☆重要な点☆

体幹部にある重要臓器の温度が一定に保たれていること。

⇒核心温(深部温)

 

ヒトの体温の平均値(腋窩温)は36.89℃±0.34℃

 ヒトの核心温(中枢温)は37℃±0.2℃

 

つまり〝37℃〟は平均的な平熱の範囲内である、ということになります。

ちょっと待って、私平熱かなり低いんだけど、といった方もいるかもしれません。

もしかしたら体温の測定方法が正しい方法になっていない可能性もあります。

 

ちょっと古い研究になりますが、

東京都内の10~50歳代の健康とみなされる男女3,000人余りを対象に、午前午後、また四季を通じて、測定時には椅子に腰を掛け、水銀体温計による30分間の腋窩検温を行った結果、

体温が36.89±0.34℃の範囲内にあるのは

『全体の73%である』といった研究結果が出ています。

平熱が低いという事は実は様々な弊害を起こしやすいのですが、そこについては後ほど詳しお話をしていきます。

なぜ37℃なの?

ではなぜヒトの体温は37℃なのでしょうか。

ヒトをはじめとする恒常動物は地球上様々な所で生活が出来ます。

外部環境である〝温度〟が変化しても、脳のほか重要臓器の温度が一定に保たれる様になっています。

これが核心温(深部温)と呼ばれます。

 

この37℃、という温度が、ヒトが思考をしたり、危険を回避したりする基本的な生命活動を行う上で極めて重要な温度とされています。

つまりはヒトの細胞が正常に機能するための様々な〝酵素〟が作用する『至適温度』が37℃である、ということになります。

 

37℃は熱がある?となった訳(諸説あり)

家庭や一般病棟では腋窩温が主流になっています。

水銀体温計を良く見ると、の37℃が赤くなっていることが分かります。

この赤く文字をしてしまった事で誤解を招いたか、と言われています。

 

 安全な麻酔のためのモニター指針(2009)日本麻酔科学会 より抜粋

 上記の通り麻酔中のモニター指針について書かれています。

そこには体温チェックについても書かれています。

つまり、体温管理は看護師が積極的に関わることが出来るモニタリングの一つであることが分かります。

 

どの様に体温調整しているの?

ではヒトはどの様に体温調整をしているのでしょうか。

ヒトには〝体温調整機序〟というものがあり、体温中枢と呼ばれる所があります。

それは前視床下部野にある『温熱中枢』と

後視床下部野にある『寒冷中枢』という部分になります。

本来は2つになるのですが、まとめて体温(調整)中枢は『視床下部』にあるとされることが多いです。

視床下部にある体温(調整)中枢は体温を一定に保つ働きがあり、設定された体温を〝セットポイント〟と言います。

しかし、何らかの病的な原因

細菌やウイルスによる感染、炎症などのよりセットポイントが通常よりも高く設定されることがあります。

これが所謂、発熱をしている状態になります。

 

行動性体温調整

体内・体外の温度変化に誘発されて熱放散や熱産生の調節に有効な行動をとること

※快適な室温を求めて部屋の温度調節を行うこと

※気候に合わせて衣服を変えること

などがこれに当たります。

 

自律性体温調整

熱産生…生体が熱を作り出す事

熱放散…熱を体外に放出する事

これらのバランスを保つことで体温が一定に保たれる事になります。

※体内で最も熱産生が多い臓器は…骨格筋と肝臓

 

熱産生

非ふるえ熱産生…骨格筋の収縮によらない熱生産

※基礎代謝(安静時の代謝)に依存する熱産生

※体温調節性非ふるえ熱産生

脳・脊髄・中枢神経 (20%)

心臓・呼吸筋 (14%)

肝臓・脾臓・消化管 (33%)

骨格筋・皮膚 (33%)

の割合を占めているとされています。

 

ふるえ熱産生…寒冷に暴露されたときに起こる 骨格筋のリズミカルな収縮

これが所謂、『シバリング』と言われるものになります。

※非ふるえ熱産生だけで熱産生が足りない場合にふるえ熱産生が起こる。

※多量の熱生産が行われます。

 

どうして低体温になるの?

熱放散による熱喪失のパターンには『伝導』『対流』『放射』はあります。

全熱放散量の『伝導』が45%、『対流』が35%、『放射』が20%と言われています。

 

低体温の定義

☆米国手術看護師協会(AORN)

〝深部体温が36℃未満〟

 

☆日本手術看護学会

「手術室における低体温」とは…

麻酔、低めに設定された室温、短時間に投与される輸液、輸血により中枢温が低下し、35℃以下になった状態

 

とそれぞれ定義されています。

 

伝導(conduction

熱が温度勾配によって移動すること  核心部から末梢への熱の移動

※皮下脂肪は熱伝導の小さい(悪い)物質なので保温に有効

男性に比べ女性の方が寒さに強いのは男性より皮下脂肪が厚いことが理由の一つ

 

※ベッドが冷たいと体温も下がりやすい

⇒術前からベッド上を暖めることで伝導を予防できる!!

 

対流 (convection

温度差による空気の上昇下降のこと

※空気は熱せられると軽くなって上昇し、冷やされると重くなり空気が下降する。

※対流により気温は均一に近づく

 

※部屋が寒いとそれだけ体温が下がりやすい

⇒入室前の室温を26~28℃設定にすれば対流を予防できる!!

 

放射 (radiation

物体が周囲に赤外線を放射して熱を移動させること

※物体との間の電磁波による熱の移動

 

蒸発 (evaporation

熱の放散が不十分なとき汗が分泌されこの水分が気化するときの気化熱 (蒸発熱)を皮膚から奪い体温を低下させる

※熱量としては「約583cal/g」 に相当

 

※肌の露出が多いと体温が下がりやすい

⇒不必要な肌の露出を避けることで予防できる!!

 

蒸散性熱放散…水分蒸発による熱の損失

発汗 それ以外…不感蒸散(不感蒸泄)

 

不感蒸散(不感蒸泄)…1日約1ℓ

肺 400ml

皮膚 600ml

 

汗腺 エクリン腺…体温調整に関係している

アポクリン腺…体温調整に関係していない

 

※体重70㎏の人で100gの汗の蒸発により1℃分の体温上昇を抑えることが出来る。

 

血流変化

皮膚の血管は主に交感神経により支配されている

 

体温↑ 交換神経の活動↑ ⇒ 皮膚の血流↑ 皮膚温↑ 熱放散↑

 

※皮膚を灌流している間に冷却された血液は静脈流として核心部に還流し核心部の温度を低下させる。

Ex.)プールに入る お風呂に入る

 

麻酔と体温

麻酔薬の影響…視床下部と脊髄レベルで体温調整反応を抑制する。

 

変温性になる…麻酔薬により体温調整機構が障害され核心温が外界温に近づく

セットポイントが変化する…体温調節能は保たれている。

 

全身麻酔導入後に核心温が低下する理由。

再分布性低体温

全身麻酔導入後1時間~2時間で核心温が〝0.5~1.5℃〟低下する。

 

体内における温かい身体核心部から末梢組織への熱の再分布 (移動)であると考えられている(末梢血管の拡張)。

 

第一期:麻酔導入後の体温初期低下

・衣類無しに室温にさらされる

・消毒による冷却、気化熱

・麻酔による熱産生の低下と

末梢血管拡張

・輸液による冷却

・乾燥した空気での換気

熱の再分布(中枢→末梢)  初期低下の80%を占める

 

 第二期

・2~3時間後まで継続する体温低下

・熱産生と熱喪失のバランスにおいて熱喪失が上回る

・第一期においても熱産生はあるが、それよりも再分布の影響が大きい

体表から体外への熱の放散による温低下

 

第三期

・血管収縮の閾値まで体温が低下

(麻酔中は約34.5℃)

→熱喪失の減少

・体温喪失と熱産生のバランスがほぼ拮抗する

・手術によっては喪失が多く、さらに体温が下がる

→開腹、腹腔鏡手術

大量出血     など

血管収縮により末梢からの熱放散が止まる

 

硬膜外麻酔・脊椎麻酔の影響

硬膜外麻酔や脊椎麻酔も体温調節の障害が起こりうる。

・末梢からの温度刺激が遮断され体温調節中枢が実際よりも高い温度と感知してしまうため。

・ブロックされた部位の体温の再分布 (血管拡張) も影響していると考えられている。

 

閾値間域(閾値温度範囲)

『寒冷反応閾値と暑熱反応閾値の間の自律性体温調節反応が出現しない平均体温域』

麻酔下では拡大するが無麻酔下では0.2~0.3℃と狭い

手術侵襲により主に免疫系細胞から放出される炎症性サイトカインが視床下部の体温調節中枢に影響を与え、閾値間域が右方に移動する。

豆知識として非ステロイド系薬剤のロピオンがこの右に移動する現象を抑えることが出来ます。

ロピオンと言えば痛み止めを理由に使用することが多いと思いますが、この様な副産物もある様です。

 

なぜ低体温ではいけないのか?

低体温の影響

低体温の影響として

仮に体温が1℃下がったら

『免疫力』☞37%低下

『基礎代謝』☞12%低下

『酵素の働き』☞50%低下

『癌細胞は低体温を好む』

と言われています。

①悪寒・震え・末梢冷感

②術後疼痛の増加

③酸素消費量の増加

④心血管系のリスク増大

⑤血液凝固障害(出血量増加)

⑥創部感染率の増加

⑦薬物代謝の遅延

⑧麻酔覚醒遅延

⑨入院日数の長期化

⑩致死率増加

比較項目(単位)低体温グループ正常温グループ差 異減少率(%)
赤血球投与(単位)1.1670.1171.0585.7
血漿投与(単位)1.400.301.1078.6
血小板投与(単位)0.900.200.7077.8
入院日数(日)19.4411.777.6740.0
ICU滞在時間(h)9.705.514.1943.2
感染率(%)19.076.9512.1263.57
心筋虚血(%)4.072.301.7743.59
輸血率(%)24.1914.439.7640.36
人工呼吸器装着率(%)18.6212.206.4234.46
致死率(%)6.012.703.3155.04

引用文献 Mahoney CB Odom J. Maintaining intraoperative normothermia :a meta-analysis of  outcomes with cost. AANJ J 1999;67(2):155-63

比較項目(単位)効果規模単位当たりコスト($)差 異 ($)
赤血球投与(単位)1.05218.50229.43
血漿投与(単位)1.1069.9176.90
血小板投与(単位) 0.70 54.3838.07
入院日数(日)7.67600.004,602.00
ICU滞在時間(h)4.19 75.00314.25
感染率(%)12.1214,000.001,696.80
心筋虚血(%)1.77 5,097.6090.23
輸血率(%)9.76 2.00 0.20
人工呼吸器装着率(%)6.42 400.00 25.68
削減コスト合計 7,073.56

引用文献 Mahoney CB Odom J. Maintaining intraoperative normothermia :a meta-analysis of  outcomes with cost. AANJ J 1999;67(2):155-63

シバリングとは。

平均体温低下時に末梢血管収縮と非ふるえ熱産生(nonshivering therm ogenesis:NST)に引き続いて出現する骨格筋の不随意的かつ律動的収縮を伴う熱産生反応のこと

熱産生

大量の酸素が必要になる

⇓ ※心拍出量増加 混合静脈血の酸素含有量が低下

二酸化炭素産生量増加ー約2倍 乳酸産生量増加

酸素消費量増加 2~8倍

アシドーシス

 

低体温による循環器系への影響

交感神経の緊張 心拍数・血圧上昇

心筋酸素供給バランスが崩れる

心筋虚血 重篤な心室性不整脈

 

末梢血管抵抗上昇 末梢血管・心臓に負荷

 

心肺機能低下患者や高齢患者にとっては危険な状態であり迅速な治療が求められる。

低体温による血液凝固への影響

血小板・血液凝固因子の機能低下 出血傾向の増大

出血量増加 輸血量増加

※体温が2℃下がると出血量が500ml増える

 

低体温による薬物代謝への影響

肝臓・腎臓への血流不足 薬物の代謝時間延長

麻酔覚醒遅延

術後の呼吸管理が長引く

 

低体温による創傷への影響

末梢血管収縮 組織への酸素供給不足

血圧低下・免疫機能低下

創部治癒遅延 感染リスク増大

入院日数の延長

 

低体温予防にチームで取り組んでいく事が重要です!!

 

体温測定の仕方。

体内の温度分布は環境温の影響を受けて変化する

四肢および体幹部表面…著しく変化 外殻部 外殻温(皮膚外殻温)

体幹部…約37℃に維持 核心部 核心温(中枢温・深部温)

※核心温でも0.5~1℃の誤差が生じる

 

直腸温を37℃とした場合の他の測定部位との温度差

直腸温約37℃
口腔温約32~34℃ (-0.3~-0.5℃)
食道温約36.8℃ (-0.2℃)
肺動脈温約36.7~37℃ (-0.0~-0.3℃)
鼓膜温約36.75~36.95℃ (-0.05~-0.25℃)
膀胱温約36.8~36.9℃ (-0.1~-0.2℃)
腋窩温約36.2~36.4℃ (-0.6~-0.8℃)

それぞれの部位での体温測定

肺動脈温

核心温 (中枢温) として深部体温の基本

スワンガンツカテーテル

 

※脳への血液環流に近い

※すべての血液が混合する温度を示すため右心室温と同等に体熱出納を知る目的で平均的な中枢温を知りたいときは最適な部位

温度は大動脈温とほぼ近似

※特に心臓外科手術において心臓の血液温度は心房細動の発生との間に密接な関係があるため心臓の血液温度を知ることは重要な意味を持つ

理想的ではあるが…

身体への侵襲がかかる。。。

ごく限られた手術以外通常は困難

非観血的に測定することが可能な部位を選択する必要がある

 

直腸温

核心温 (中枢温) と言えば直腸温 骨盤内臓器の温度を反映する

という風潮がある。おそらく手術室で核心温として最も多く利用されている。

測定方法

肛門内に体温計あるいは測定用プローブを挿入

成人:約8cm 乳幼児:約3cm

温度変化に対する反応が遅い

腸内ガスや糞便の影響を受ける(体温が低く測定される)

下腹部手術では外気や洗浄液などの影響を受ける

プローブによる直腸穿孔

※外気温や洗浄液温を反映した温度が測定される

※低体温からの復温中、正常温度に戻るまで直腸温は肺動脈温に比べ遅れて変化する。逆も然り。。。

※臨床的に一般的な他の測定部位より高く測定される。

 

食道温

中枢温としての信頼性が高い

左心房の高さに位置し大動脈温を反映する

プローブ挿入位置

食道の下位1/3の部位 (下部食道)

※肺動脈、大動脈血流の影響を受けるため、急激な体温変化にきわめて迅速に反応が追随するとされている。

直腸温より早い

手術手技や外気、洗浄液の影響を受けやすい症例では適さない

※上部開腹手術や開胸手術など

粘膜損傷や穿孔の危険がある

※食道静脈瘤患者には禁忌

開頭術では影響が少なく有効か、と思われます。

 

膀胱温

尿量が保たれている場合は中枢温として信頼性が高い

血液温(膀胱動脈)を反映する

尿量が少ない場合は値が不正確

下腹部手術では外気や洗浄液などの影響を受ける

※非開腹術や開胸術、上腹部開腹術では直腸温よりも迅速に変化

心外の手術での使用は有効か。

※ほとんどの手術症例でフォーレを入れる為、ついでに測定できる。

コスト面でやや軽減できるか。

 

鼻咽頭温

脳温を良く反映するがある程度測定技術が必要

脳温を反映する内頸動脈温を持続的に測定

※鼻腔を通して鼻咽喉にサミスタープローブを挿入する

 

測定値は吸引される酸素の温度に影響され不正確なことが多い

※測定値は肺動脈温より約0.5℃低い(健常成人の安静時の場合)

急速に体温が変化しているとき肺動脈温と鼻咽頭温は相関しない

※正確な温度を測定するには4~6cmの深さ程度の挿入が適切とされており深すぎても浅すぎても信頼できる値は計測できない

鼻咽頭に外傷がある場合この方法は好ましくない

挿入時は粘膜からの出血の誘発に注意が必要

 

鼓膜温

中枢温測定部位として適合性がある

外頸動脈で環流されている鼓膜は脳温を反映している

※視床下部に流入する血液が内頸動脈から出ており、鼓膜の血液温をよく反映する

接触型鼓膜温

直接鼓膜温に接触するように挿入され電子モニターに接続し測定する

※連続的な測定が可能であり、臨床的にも体温が急速に変化する場合などの中枢温の指標として有用であるとされている

※体外循環による冷却加温時にも、送血血液温によく追従する

 

挿入時若干の痛みを伴い、また鼓膜を傷つける恐れがある

※全身麻酔時は特に注意が必要!

 

非接触型鼓膜温

鼓膜から放射される赤外線エネルギーを測定する赤外線反射式体温計

※体温を簡単にしかも患者に不快感を与えることなくわずか数秒(2~5秒)で測定することが可能

※精度と信頼性に関するいくつかの臨床的調査の結果精度がずば抜けていることが示された

 

連続測定できない

正確に測ることが難しい

※プローブは先端鼓膜方向に向け、オートスコープを扱うように取り扱い、また外耳道が直線的になるように少し耳を後ろに引き、プローブ先端を外耳道の開口部にぴったりと挿入する必要がある

 

イヤホン型の赤外線鼓膜体温計

※ほぼ正確に1秒単位で赤外線量を測定することができる

※核心温として信頼性の高い食道温により近い追随性を示し、さらには非常に高い相関関係を認めた

 

時代は鼓膜温!?

 

その他の体温測定。

口腔温:舌下温

※比較的簡便で急性疾患や口腔内に病変がない成人者患者にとって間欠的な測定を比較的安全に測定できる方法の一つ

※腋窩温とともに広く用いられる外殻温測定であり、舌の裏側、舌小体の左右どちらかに体温計を当てて、軽く口を閉じさせ、測定する

※舌根部は外頸動脈からの血流を受けているため、食道温と近似した測定値を示すと考えられている

※意識のない患者、じっとしていない患者、混乱している患者、シバリング中の患者の場合はプローブの固定不良、破損などが考えられる

 

前額部深部温

※外気温の影響を受け深部より低くなる体表面を断熱材で覆い、外気温の影響を遮断することで、体表面の温度を深部の温度と等しくなるように電気的に加温することにより、核心温を体表面から測定することを可能としている

※室温以下の深部温は測定できないこと、電気メス使用時に一過性に測定不可になるという欠点、長時間の使用で接触性皮膚炎を起こす可能性が懸念される

 

末梢体温

※末梢体温は末梢循環を反映するため、その中枢温との較差末梢循環動態を推察する重要な手段の一つとなる

中枢温(核心温)と末梢温の較差が3℃以内

 

末梢体温の評価=患者に触れる事

核心温のみではなく末梢温も看ながら体温管理を!!

 

体温管理の実際。

様々な加温装置

温風式加温装置のブランケットの種類

 

温風式加温は最も短時間で加温できる方法として提示されています。

※温水循環式加温装置に比べ温風式加温装置は「約0.9℃」体温を高く維持iすることが可能と考えられている

※加温面積の差が加温効果 (体温維持) に大きく影響すると考えられる

 

体表面積と加温効率

温風式加温装置のブランケットでより広範囲の体表面(約30~35%)を覆い、均一な熱配分が行えれば効果的な加温が可能となる。

 

術前加温(プレウォーミング)

術前(全身麻酔前)に皮膚表面を加温することで再分布性低体温の影響を小さく抑えることが可能と考えられている。

術前からの加温とカバーする範囲の広さにより、手術開始2時間後までの体温低下が-0.2℃と少なく、再分布性低体温が予防できる。

30分前からだとより効果的であることが証明されています。

10分前からでも実施すると少しでも効果あり。

 

ブランケットや術前加温が良いことは分かるが…

※消毒や出血でブランケットが汚れて単回使用になるとコストがかかる

※今までの方法でシバリング無く出来てるから、敢えてやる必要あるのだろうか

※室温は26~28度にしているが、ベッドの上まで温めることは必要??(手間がかかる?)

※今までの方法で問題なく出来ている状況でさらなる必要性を伝えるには難しい。

※マンパワーや設備の問題でなかなか実施することは難しい

etc…

 

今あるもので出来ることを考えよう。

術前~手術開始前

『術前から不用意に体温を下げない!!』

◎術前からベッド上のプレウォーミング

◎患者にかけるタオルケットを暖めておく

◎術前に着替える病衣を暖めておく

◎室温は26~28度設定

◎術前訪問時に、患者に対し手術室へ向かうときには暖かい格好で来るように説明する

※靴下や上着など着て来ても大丈夫!

◎麻酔導入時や消毒前までの短時間でも患者の肌を露出させない

 

術中

『看護師が体温管理に積極的に関わろう!!』

◎全身麻酔=体温低下と考え核心温を観察し、患者に触れて末梢温を確認した上で看護師が体温状況をアセスメントする

◎手が冷たい!!核心温が下がってきた!!と思ったら麻酔科医と連携し、手術開始と同時に積極的に加温しよう

※術式や年齢によってうつ熱になる可能性がある場合は例外

意識を変えよう!!

 

術後

『積極的に全身を温めよう!!』

◎術直後から加温装置で全身を加温する

◎術中下げていた室温を26~28度まで上げる

◎ドレーンやフォーレを固定する時に無駄な露出を避ける

◎術後ベッドを温めておく

※麻酔科Drと協同し相談しながら進めていこう!

 

術後訪問

『体温管理がどうだったか患者さんに聞いてみよう』

〝患者さんに不快な思いをさせない〟

〝効果的な体温管理が出来たと評価〟

◎シバリングが起きないこと

患者さんから「寒い…」という発言が聞かれないことが一番

◎さらに患者さんから

部屋に入ってからベッドに横になっても寒い思いをしなかった〝暖かくてホッとした〟などの発言が聞かれたら。

 

『低体温予防にみんなで(チームで)努めていこう!!』