医療ドラマをどう学びに変えるか。手術室経験者が見るときの視点。

こんにちは、あるいはこんばんは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。

元手術室の看護師です。現在は大学で教員をしています。

今回は、少し軽めのテーマに見えるかもしれませんが、私なりに大事だと思っていることを書いてみます。

題して、
「医療ドラマをどう学びに変えるか。手術室経験者が見るときの視点」
です。

医療ドラマは、基本的には娯楽です。
まずそこは大前提だと思います。

現実の医療現場をそのまま再現しているわけではありませんし、演出もあります。
緊張感を強めるために誇張されている場面もありますし、逆に現実ではもっと地味で時間のかかることが、分かりやすく省略されていることもあります。

だから、ドラマをそのまま「医療の正解」として受け取るのは危ういと思います。

ただ、それでも私は、医療ドラマには学びに変えられる部分があると感じています。

特に看護学生さんや、これから手術室を見学する人、手術看護に少し関心がある人にとっては、見方によって学びの入口になることがあります。

今回は、手術室経験者の立場から、医療ドラマをどう見れば学びにつながるのかを整理してみます。

医療ドラマは「正確さ」だけで見るものではない。

医療ドラマを見ると、つい

「こんなこと現実ではしない」
「こんなに都合よく進まない」
「こんな言い方はない」

と思うことがあります。

実際、現場を知っているほど、気になる部分は出てきます。

手術室まわりの描写でも、

  • 清潔・不潔の扱い

  • 器械の受け渡し

  • 患者さんへの関わり

  • チームの動き

  • 緊急時の流れ

などで、「現実とは違うな」と感じることはあります。

でも、だからといって「間違っているから見る意味がない」と切ってしまうのは、少しもったいない気がします。

医療ドラマは、教科書でも実習でもありません。
ですから、正確さだけを採点するように見るよりも、

何が描かれていて、何が省略されていて、何を強調しようとしているのか
を見る方が、ずっと学びになります。

現実と違う部分があるからこそ、「では現実ではどうなのだろう」
と考えるきっかけにもなるからです。

手術室経験者がまず見るのは「技術」より「空気」

医療ドラマというと、つい手技や処置の正確さに目が向きがちです。

もちろんそこも気になります。

正直なところ、数々の医療ドラマで手術室の場面を見てみても、手術室看護師の技術に関して取り上げる機会はあまりないのでは?と思います。

ただ、私自身が手術室経験者として見ていて気になるのは、むしろその場の空気です。

たとえば、

  • 誰がどこで緊張しているか

  • チームの中で誰が強い立場にいるか

  • 誰が声を出しやすいか

  • 誰が萎縮しているか

  • 緊急時に空気がどう変わるか

こういうところです。

医療現場、とくに手術室は技術だけで回っているわけではありません。
役割、関係性、緊張感、言葉のかけ方、その場の空気。
そういったものの積み重ねで成り立っています。

ドラマでは、その空気が分かりやすく描かれていることがあります。

もちろん現実より誇張されていることもあります。
それでも、

この人はなぜ黙っているのか
この場面で声を上げにくいのはなぜか
なぜこのチームはうまく回っていないのか

と考えてみると、現場の構造を見る練習になります。

ドラマですので、現実より少々(多大に?)表現されている事も多いです。

例えば器械出し看護師のミスに大声を出して怒鳴りちらしたりするシーン。

私の若い頃は大いにありました。

が、最近はパワハラ問題も大きく取り上げられる時代ですので、少なくなってきている印象です。

「誰が何をしているのか」を整理して見る。

医療ドラマは展開が早いので、見ていると医師だけが目立って見えることがあります。

でも、実際には一つの場面の中に、いろいろな役割があります。

特に手術場面では、

  • 執刀する人

  • 麻酔を担当する人

  • 器械を渡す人

  • 外回りで全体を支える人

  • 記録や準備を担う人

など、それぞれ違う役割があります。

ドラマではそこがかなり単純化されることがありますが、逆に言えば、
「この場面、本当は誰が何をしているのだろう」
と考える練習ができます。

これは、手術室見学や実習にも少しつながります。

実際の手術室は、最初は何が起きているのか分かりにくいです。
誰が中心で、誰が支えていて、どこに注目すればいいのかが見えにくい。

だからこそ、ドラマを見るときにも、

  • 誰が主に動いているか

  • 誰が場を支えているか

  • 表に出にくい役割は何か

を意識するだけで、見え方が少し変わります。

「すごい人」を見るより、「支えている人」を見る。

医療ドラマでは、どうしても天才的な医師や強い主人公に目が集まりやすいです。

それはドラマとして自然なことだと思います。
ただ、学びに変えるという意味では、目立たない側を見ることも大切だと思います。

たとえば、

  • 主人公を支える看護師

  • 空気を読んで動くスタッフ

  • 場の混乱を静かに整えている人

  • 患者さんや家族の不安を受け止めている人

こういう人たちです。

現実の医療現場は、目立つ人だけで成り立っているわけではありません。
むしろ、目立たないところで支えている人たちによって成り立っている部分が大きいと思います。

これは手術室でも同じです。

器械出しや外回りは、ドラマでは短くしか映らないかもしれません。
でも、実際にはそうした役割が場を成立させています。

なので、ドラマを見るときも、
誰がすごいかだけでなく、
誰が支えているか
を見ると、学び方が少し変わります。

現実と違う描写は「間違い探し」ではなく「比較材料」にする。

医療ドラマには、現実と違うところがあります。

それ自体を責めることは簡単です。
でも、学びにつなげるなら、
間違い探しで終わらせない
方がよいと思います。

たとえば、

  • なぜこういう描写にしたのだろう

  • 現実では何が違うのだろう

  • 何が省略されているのだろう

  • なぜこの役割が見えにくいのだろう

と考えてみる。

すると、ただ「リアルじゃない」で終わるより、ずっと面白いです。

特に学生さんにとっては、
「ドラマと現実は違う」
ということを知るだけでも意味があります。

さらに、そこから
では現実の看護や手術室では何が起きているのか
に興味がつながれば、それは十分学びだと思います。

看護学生が医療ドラマを見るときに意識すると良いこと。

もし看護学生さんが医療ドラマを見るなら、私は次のような見方をする良いと思います。

1. 正しいかどうかだけで見ない。

まずは楽しんでよいと思います。
そのうえで、「現実ではどうなのだろう」と少し考えるくらいで十分です。

2. 看護師が何をしているかを見る。

目立つ処置ではなく、支え方、声かけ、観察、タイミングなどを見る。

3. 患者さんや家族の描かれ方を見る。

病気だけでなく、不安や迷いがどう扱われているかを見る。

4. チームの関係を見る。

誰が話しやすいか、誰が黙っているか、場の空気はどうかを見る。

5. 分からないことをそのままにしない。

聞いたことのない言葉や役割が出てきたら、軽く調べてみる。
それだけでも学びになります。

医療ドラマは「学びの入口」にはなっても、「学びそのもの」ではない。

ここは大事だと思います。

医療ドラマは、学びの入口にはなります。
でも、それ自体が学びの中心になるわけではありません。

本当に理解したいなら、

  • 教科書を読む

  • 実習で見る

  • 現場の話を聞く

  • 振り返る

  • 自分で整理する

ことが必要です。

ドラマだけで分かった気になるのは危ういです。
ただ、興味を持つきっかけ、疑問を持つきっかけ、考えるきっかけとしては、とても力があると思います。

実際、医療ドラマを見て

  • 手術室に興味を持った

  • 看護師の役割が気になった

  • 医療現場の空気に関心を持った

という人は少なくないと思います。

その意味では、ドラマを入り口にして、その先に学びをつなげることは十分ありだと感じます。

おわりに。

医療ドラマをどう学びに変えるか。

今の私が思うのは、
正確かどうかだけで切り捨てず、何が描かれていて、何が省略されているのかを考えること
が大切だということです。

手術室経験者として見ると、技術の正確さ以上に、場の空気、役割の見え方、支えている人の存在、言葉にしにくい緊張感の方が気になることがあります。

ドラマはあくまでドラマです。
でも、その中に、現実の医療や看護を考える入口はあります。

看護学生さんでも、すでに現場で働いている人でも、
「これは現実ではどうなのだろう」
「本当は誰が何をしているのだろう」
と少し立ち止まって見てみるだけで、受け取り方は変わるのかもしれません。

娯楽として楽しみながら、少しだけ学びにも変えていく。
そのくらいの距離感が、医療ドラマとの付き合い方としてはちょうどよいのではないかと思います。

参考までに。

医療ドラマは、娯楽として楽しみながら、少しだけ学びの入口にもできるのかもしれません。
気になる作品がある方は、配信サービスを確認してみてください。

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