【看護学生向け勉強術】『褥瘡』について【ココがポイント!】

こんにちは、あるいはこんばんは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。

元手術室の看護師です。現在は大学で教員をしています。

こちらのコーナーでは看護学生向けに勉強すべきことをそれぞれ項目ごとにまとめています。

看護師国家試験に向けての勉強に役立てていただければと思います。

 

※今後動向により内容を修正していく事も大いにあり得ます。

ポイントにあるキーワードなど自身でさらに調べる必要があります。

またさらにブラッシュアップしていきたいと思っていますので、間違っている部分や最近の傾向など何か情報などありましたらご連絡いただければと思います。

 

これだけは確認しておくこと!

時間をかけていられない人向け。

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褥瘡とは(定義)

褥瘡とは、体の一部に長時間圧力が加わることで、皮膚やその下の組織が壊死(えし)する状態を指します。
一般的には「床ずれ」とも呼ばれ、高齢者や寝たきりの患者に多く見られます。

国際的には「持続的な圧迫またはずれ、摩擦などの外力により局所の血流が阻害されて発生する組織損傷」と定義されています(NPUAP/EPUAP 2019)。

 

 発生のメカニズム(流れで理解する)

① 圧迫(Pressure)

  • 体とベッド・車いすなどの接触面に圧力が加わる。

  • 骨の突出部(仙骨・踵・坐骨・大転子・肩甲骨など)は特にリスクが高い。

  • 圧力が 毛細血管圧(約32mmHg)を超える と、血流が停止。

ポイント
血流が止まる → 酸素や栄養が届かない → 組織が虚血状態に。

② 虚血(Ischemia)

  • 虚血が続くと、細胞の代謝が停止

  • ATPが枯渇し、細胞膜が障害される。

  • 細胞内のNa⁺・Ca²⁺濃度が上昇 → 細胞腫脹・壊死

③ 圧迫解除後の再灌流障害(Reperfusion Injury)

  • 圧迫が解除されても、すぐには元に戻らない。

  • 血流再開時に**活性酸素(フリーラジカル)**が発生し、
    組織をさらに損傷させる。

 ここが褥瘡の隠れた進行要因です。
「圧迫→解除→再圧迫」を繰り返すと、障害は深部まで進む。

④ せん断力(Shear Force)・ずれ

  • ベッド上でずり落ちる姿勢になると、
    皮膚表面は固定される一方で、皮下組織がずれる。

  • 結果、血管がねじれ・引き伸ばされて損傷する。

せん断力は深部組織損傷(DTI)の主因。
見た目は正常でも、内部は壊死していることがある。

⑤ 摩擦力(Friction)

  • 体を引きずって移動させるなどの動作で、
    皮膚表面が擦れ、表皮の防御機能が低下

  • わずかな刺激でも皮膚剥離・水疱形成へ。

⑥ 湿潤(Moisture)

  • 汗・失禁・浸出液などの過度な湿潤環境は皮膚をふやかし、
    バリア機能を低下させる。

  • これにより、わずかな圧迫や摩擦でも損傷しやすくなる。

 

局所的要因

加齢による皮膚の変化 摩擦・ずれ 失禁・湿潤 局所の皮膚疾患

全身的要因

低栄養 やせ 加齢・基礎疾患 薬剤投与 浮腫

社会的要因

介護力(マンパワー) 資金面での問題

 総合メカニズム図(イメージ)

【外的要因】
┣ 圧迫 → 虚血 → 細胞壊死
┣ せん断力 → 血管損傷 → 深部壊死
┣ 摩擦 → 表皮損傷 → バリア破壊
┗ 湿潤 → 皮膚脆弱化 → 損傷促進

【内的要因】
┣ 栄養不良(低アルブミン血症)
┣ 貧血・低酸素
┣ 体動困難・意識障害
┗ 高齢・糖尿病・血管障害など

【結果】
▶ 皮膚・皮下組織の壊死(褥瘡)

 深部損傷型褥瘡(DTI: Deep Tissue Injury)

最近注目されているのが、
表面はきれいだが、内部で壊死が進行する」タイプです。

  • 長時間の圧迫・せん断力で、まず筋層から壊死が始まる。

  • 数日後に皮膚表面が紫色~黒色に変化。

  • 発見が遅れると急速に第Ⅳ度褥瘡(筋・骨露出)に進行。

発生リスク因子まとめ

カテゴリ代表例影響
外的因子圧迫・摩擦・せん断・湿潤直接的組織損傷
内的因子栄養不良・貧血・浮腫・発熱・脱水組織耐性の低下
全身因子高齢・意識障害・麻痺・糖尿病・動脈硬化感覚低下・循環不全
環境因子不適切な体位・寝具・看護ケア不足圧力集中・長時間保持

看護師国家試験でよく出るポイント

出題傾向重要語句
圧迫による虚血が主因「毛細血管圧」「32mmHg」「血流障害」
せん断力・摩擦力の違い「ずれ=せん断」「擦れ=摩擦」
湿潤の悪影響「皮膚のバリア機能低下」「失禁関連皮膚炎」
DTI(深部損傷型褥瘡)「表面正常でも内部壊死」

褥瘡は「外力(圧迫・せん断・摩擦・湿潤) × 組織耐性の低下」の結果として生じる。
→ したがって、除圧・保湿・清潔・栄養管理・体位変換が予防の基本。

好発部位

骨の突出している部分に多く発生します。

体位好発部位
仰臥位仙骨部、踵(かかと)、肩甲骨、後頭部、肘頭
側臥位大転子部、耳介、膝の外側、くるぶし
腹臥位頬骨、胸骨、膝蓋骨、つま先

褥瘡のステージ分類(NPUAP分類)

褥瘡の重症度は「Stage Ⅰ~Ⅳ」で表されます。

ステージ病態特徴
Stage Ⅰ発赤のみ圧迫を解除しても退色しない紅斑。皮膚はまだ損傷していない。
Stage Ⅱ表皮~真皮の損傷水疱や浅い潰瘍。皮膚が一部剥離。
Stage Ⅲ皮下組織までの損傷脂肪層が露出。壊死組織を伴うこともある。
Stage Ⅳ筋肉・骨まで達する損傷筋・腱・骨が見える。重篤な感染の危険。

※日本では「DESIGN-R®」という評価スケールも用いられ、深さや滲出液量などを多角的に評価します。

リスク要因

患者側の要因

  • 長時間の臥床・車椅子座位

  • 栄養状態の低下(低アルブミン血症など)

  • 高齢・筋力低下・認知症

  • 感覚障害(脊髄損傷・糖尿病性神経障害など)

  • 失禁・発汗過多

外的要因

  • 圧迫・ずれ・摩擦

  • 体位変換の不足

  • 不適切な寝具・車椅子クッション

  • シーツのしわ、湿潤環境

褥瘡の予防

褥瘡は「予防が最も重要」と言われます。
看護現場では以下の4本柱が基本です。

① 体位変換

  • 2時間ごとを目安に体位を変更(状況により頻度調整)

  • ポジショニングでずれ・圧迫を減らす

  • 三角枕やポジショニングクッションを活用

② 体圧分散

  • エアマットレス・ウレタンマット・ゲルクッションなどを使用

  • 骨突出部の直接的な圧迫を避ける

③ スキンケア

  • 皮膚を清潔・乾燥・保湿に保つ

  • 汚染があれば早期に洗浄し、保護剤を塗布

  • 失禁ケア製品の適正使用

④ 栄養管理

  • エネルギーとタンパク質の十分な摂取

  • 亜鉛・ビタミンCなど創傷治癒に必要な栄養素の補給

  • NST(栄養サポートチーム)との連携

治療

保存的療法

  • 圧迫の除去(体位変換・体圧分散)

  • 壊死組織の除去(デブリードマン)

  • 創部の洗浄(生理食塩水など)

  • 適切なドレッシング材選択(ハイドロコロイド・フォーム材など)

外科的療法

  • 感染や深部壊死がある場合は外科的切除・皮弁形成術

感染管理

  • 感染兆候(悪臭・滲出液増加・発赤拡大)を評価

  • 抗菌剤・抗生物質の使用(必要時)

評価と記録(看護実践)

看護師は定期的に以下を評価・記録します。

  • 褥瘡発生リスク(Braden Scaleなど)

  • 褥瘡の部位・大きさ・深さ・滲出液・壊死組織・周囲皮膚の状態

  • ドレッシング材の種類・交換時期

  • 栄養状態・体位変換頻度の記録

看護師の役割

  • 予防ケアの中心的役割(体位変換・スキンケア・教育)

  • 医師・栄養士・リハスタッフとの連携

  • 患者・家族への指導(体位のとり方、皮膚観察など)

参考文献・ガイドライン

  • 日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」

  • EPUAP/NPIAP/PPPIA. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 2019.

 

褥瘡の看護 ― 看護師の専門的役割と実践

褥瘡看護の目的

褥瘡看護の目的は、

「褥瘡の発生を防ぐこと」
「すでにできた褥瘡を悪化させず、治癒を促進すること」
「患者のQOL(生活の質)を保つこと」

この3点が中心です。

褥瘡は予防が最も重要であり、看護師は日常の観察・ケア・記録・チーム連携の要を担います。

褥瘡の看護の基本的考え方

  1. リスクアセスメント(発生危険度の評価)

  2. 予防ケアの実施

  3. 早期発見・悪化防止

  4. 創傷治癒を促進する局所ケア

  5. 全身状態の改善(栄養・活動性など)

  6. チームアプローチと継続的評価

褥瘡リスクのアセスメント

褥瘡ができる危険がある患者を早期に見つけることが看護の出発点です。

代表的な評価法:

スケール特徴
Braden Scale(ブレーデンスケール)6項目(知覚、湿潤、活動、可動性、栄養、摩擦・ずれ)を評価。18点以下でリスクあり。
OHスケール(岡田・林式)日本人向け、活動性・食事摂取などを細かく評価。
DESIGN-R®既に発生した褥瘡の状態評価に用いる。

褥瘡の予防的看護

体位変換とポジショニング

  • 2時間ごとを目安に体位を変更。

  • 骨の突出部(仙骨・踵・肩甲骨など)の圧迫を軽減。

  • ずれを防ぐため、30度側臥位半腹臥位が推奨。

  • クッションや三角枕を使用し、体圧を分散。

💡ポイント:
ベッドのギャッジアップ角度は30度以内。角度が大きいとずれ力が増す。

体圧分散寝具の使用

  • エアマットレス、ウレタンフォーム、ゲルマットなどを活用。

  • 患者の体重・動き・皮膚状態に応じて選定。

  • マットレスが沈みすぎる場合は圧力が集中し逆効果になるため、定期点検が必要。

スキンケア

  • 清潔・乾燥・保湿を基本とする。

  • 尿・便失禁時は早期に洗浄し、皮膚保護剤を塗布。

  • シーツのしわ、衣類の折り目を除去。

  • 弱酸性の石けんでやさしく洗浄。

  • 保湿剤(ワセリン、バリアクリームなど)で皮膚バリアを守る。

栄養管理

  • 低栄養は創傷治癒を遅らせる。

  • タンパク質、エネルギー、ビタミンC、亜鉛の補給が重要。

  • NST(Nutrition Support Team)と連携し、食事内容を調整。

  • 経口摂取困難時は経腸・静脈栄養を検討。

環境整備

  • ベッド・車椅子の高さ、寝具の硬さを適正化。

  • シーツ・衣類を乾燥した状態に保つ。

  • 室温・湿度を適度に管理(乾燥や多湿を避ける)。

褥瘡発生後の看護

局所ケア(創部ケア)

ケア内容目的・方法
洗浄生理食塩水でやさしく洗う。強い流水やアルコールは避ける。
壊死組織除去(デブリードマン)外科的・機械的・酵素的・自壊的に除去。感染源を減らす。
ドレッシング材の選択滲出液の量・感染状態に合わせて選定。
保湿環境(湿潤療法)適度な湿潤環境を維持し治癒促進。

代表的なドレッシング材:

  • ハイドロコロイド(浅い褥瘡に)

  • ハイドロファイバー(滲出液が多いとき)

  • フォーム材(中〜重度)

  • アルギン酸塩(出血傾向がある創に)

感染管理

  • 膿・悪臭・発赤拡大・熱感などの観察。

  • 感染兆候があれば、医師へ報告・培養検査依頼。

  • 局所抗菌薬や全身抗生剤の使用(必要時)。

  • 創部を清潔に保ち、ガーゼ交換時の無菌操作を徹底。

疼痛管理

  • 褥瘡部の痛みを定期的に評価(NRSなど)。

  • 体位変換時の痛みに配慮し、優しく支持。

  • 鎮痛薬や湿潤材の使用を医師と相談。

記録と評価

  • 褥瘡日誌/評価表(DESIGN-R®)を用い、定期的に記録。

  • 創部写真を時系列で保存し、経過を客観的に把握。

  • ケア実施後の変化(滲出液減少・肉芽形成)を評価。

チームアプローチ

褥瘡治療は看護師だけでなく、多職種連携(褥瘡対策チーム)が鍵です。

職種主な役割
医師治療方針の決定、外科的処置
看護師予防ケア・観察・報告・指導
管理栄養士栄養状態評価と食事管理
理学療法士体位変換・ポジショニングの助言
褥瘡専任看護師(WOCナース)専門的評価と教育支援

看護師の教育的役割

  • 家族・介護者への体位変換方法の指導

  • 自宅退院後の褥瘡予防ケア説明

  • 皮膚観察のポイントを共有

  • 介護施設・在宅チームとの情報連携

倫理的配慮とQOL

褥瘡がある患者は、羞恥心・不快感・痛み・臭いなどで苦痛を感じることがあります。
看護師は、

  • プライバシー保護

  • 苦痛の軽減

  • 積極的傾聴

  • 自尊心への配慮

を大切にし、身体的・心理的なサポートを両立することが求められます。

看護計画(例)

看護診断例:皮膚統合性障害のリスクがある(活動性低下・失禁・低栄養)
目標褥瘡を発生させない/既存褥瘡を悪化させない
観察項目皮膚の発赤、体位変換実施状況、滲出液の量、疼痛の有無
ケア体位変換、皮膚清潔保持、保湿、栄養補給、ドレッシング交換
評価発赤消失、肉芽形成促進、感染兆候なし

まとめ

🧩褥瘡看護の要点まとめ

  • 予防こそ最大の治療

  • 観察・記録・報告の徹底

  • チームで支える褥瘡ケア

  • 患者の苦痛・尊厳に配慮すること

国家試験での頻出テーマまとめ

テーマ出題頻度ポイント
褥瘡の好発部位★★★★★骨突出部を選ぶ
原因と発生機序★★★★★圧迫・ずれ・摩擦
体位変換と予防★★★★★2時間ごと、体圧分散
ステージ分類★★★★☆Ⅰ~Ⅳの特徴を暗記
栄養と褥瘡★★★★☆低アルブミン血症に注意
皮膚管理★★★☆☆保湿・清潔・失禁ケア
治療法★★★☆☆除圧・洗浄・デブリードマン

暗記ポイントまとめ(ゴロ合わせ)

  • 好発部位ゴロ:
    こうせんしっぽ
    こう(踵)・せん(仙骨)・し(肩甲)・っぽ(後頭)

  • 褥瘡の原因3要素:
    あずま(圧・ずれ・摩擦)

  • ステージ進行:
    Ⅰ赤・Ⅱ皮・Ⅲ脂・Ⅳ筋骨

国試過去問でよく出る形式(例)

Q:仙骨部に発赤があり、圧迫を解除しても退色しない。皮膚はまだ損傷していない。ステージ分類はどれか。
→ 正答:Ⅰ期

Q:褥瘡の予防で最も適切なのはどれか。
→ 正答:2時間ごとの体位変換

Q:仰臥位で最も褥瘡ができやすいのはどこか。
→ 正答:仙骨部


出題傾向まとめ(第112〜113回 国試)

出題内容正答テーマ
第113回 午前好発部位仙骨部
第113回 午後発生機序圧迫
第112回 午後予防方法体位変換
第111回 午前ステージ分類Ⅲ期

 

褥瘡について 国家試験対策プリント ご自由にどうぞ

褥瘡 国家試験対策プリント