【手術室看護師向け】手術チームにおけるストレスマネジメント

こんにちは、あるいはこんばんは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。

元手術室の看護師です。現在は大学で教員をしています。

手術室はチームで仕事をすることが基本中の基本です。

さらに様々な多職種との関わりも多い所です。

他者との関わりが多いということはそれだけコンフリクトも起きやすいという事になります。

【悩める看護師必見】看護師間で発生するコンフリクトの対処法について【コンフリクトマネジメント】

それによってストレスを溜め込んでしまう事も多いでしょう。

今回の記事ではその手術チームによって起こるストレスと、そのマネジメントについて深掘りしていきます。

 

偉人たちの言葉。

フリードヒ・ニーチェの言葉に以下の様な言葉があります。

「人生にはつらいことが起こる。悲劇も起こる。しかし、苦しいからといって自分は運が悪いと思わないでほしい。

むしろ、苦しみを与えてくれる人生を尊敬するようになってほしいのだ。

 

苦しみによって、この精神が、この心が、生きようとするこの力がますます鍛えあげられていくのだとほくそえんでほしい。」

 

いかがでしょうか。

なかなかのポジティブ発言です。

なかなかほくそ笑むまでの心境に至れませんよね。

私もまだまだ未熟です。

しかしながら、これくらいの気の持ちようってこの世知辛い世の中を生き抜く上で必要なスキルのなのかもしれません。

 

松下幸之助「道をひらく」より

憂事に直面しても、これを恐れてはならない。

しりごみしてはならない。「心配またよし」である。

心配や憂いは新しくものを考えだす一つの転機ではないか、そう思い直して、正々堂々とこれと取り組む。力をしぼる。

するとそこから必ず思いもかけぬ新しいものが生み出されてくるのである。

新しい道がひらけてくるのである。

 

ブッダ

恥ずかしい失敗を大成功に変える

愚かな人は、自らの気持ちを「暗く」します

賢者は、みずから「明るく」しようと努めます

 

多く失敗する人ほど、多くを学ぶ

ストレスとは。

『何らかの対処が必要な状況や変化』のこと。

 

簡単に対処できることはそれで済むが、対処が難しい状況では私たちの心や身体は様々な反応が起こります。

それが〝ストレス反応〟と呼ばれます。

さらに強く影響していくと、

心身の症状や仕事や生活に支障が出てきます。

 

ストレスへの適応プロセスを載せていますが、抵抗期にある正常な抵抗力が働いているうちは良いのですが、そこから疲はい期に移ってしまう前に何かしらの対処が必要ということになります。

 

ストレスの初期徴候を理解する。

ストレスの初期徴候として以下の様なことが挙げられます。

 

心理・情緒面

・不安、緊張、イライラ、抑うつ、不平不満の多さ、興奮、混乱

・意欲減退、自信喪失、配転希望や退職希望

・集中力の低下

 

身体面

・不眠、慢性疲労、倦怠感

・循環器系症状、筋神経系症状、皮膚症状、月経異常

・心身症に繋がることもある

 

行動面

・遅刻、欠勤、作業能率の低下やミスの増加

・同僚との付き合いを避ける

・些細なことで口論、大酒、大食

・睡眠薬の乱用、生活の乱れ、身だしなみの欠如

 

心理的ストレス反応の5段階

段階1:疲労感

心身面で疲れを感じる。

具体的には起きた時から疲れ切っている。

いつも緊張している等の状態が現れる。

 

段階2:イライラ感

感情が不安定になり、特にわずかな刺激でも怒りやすくなる。

わずかなことでも腹を立てる。

指図をされると腹が立つなどの状態。

 

段階3:緊張感

自分の能力が問われるような対人場面や未経験の状況等で落ち着きのなさや自己主張の低下等が現れる。

会議の発表で取り乱す、上司に見られていると仕事が手につかない等。

 

段階4:身体の不調感

身体の不調や変調を感じやすくなる。

具体的には胸の痛み、動悸、発汗、息苦しさなどの不調感が自覚される。

 

段階5:憂鬱感

乗り気がしない、面白くない気分を意味する。

具体的には物事への興味が湧かない。

根気が続かない、注意力が低下してミスが増える。

 

メンタル不全に至る3つのステップ

第1段階

心拍数の増加、発汗、身体の震えなどの身体反応が頻繁に起こる。

 

第2段階

不眠、胃痛、生理不順、喘息などの身体症状が起こる。

 

第3段階

うつ病、パニック発作、神経症などのメンタル不全に追い込まれる。

 

心の健康問題のサインへの応じ方

・行動面のサインに敏感になる

・サインに気付いた時は受診をすぐに勧めるのではなく、まずは話を聞く時間と場所を設ける

・サインを見つけた時の大前提は「焦らず」「慌てず」「先走らず」

・十分に信頼関係を構築したらストレスの原因に迫る

・受診の必要性を感じたら、身体面・行動面の症状に焦点を当てる

 

看護師のストレス

鈴木安名著:スタッフナースの離職を防ぐメンタルサポート術

日本看護協会出版会.2009 より

 

Ⅰ.看護師という職業の特性によるストレス

①命に関わる仕事という責任感の重圧

②感情労働のストレス

③配置転換

④倫理的葛藤

⑤患者・家族からの暴力

⑥患者・家族からの過度の要求

 

Ⅱ.病院という職業環境によるストレス

①物品・医療機器・感染性物質等による危険

②交代勤務の生体リズムへの負荷

③変則労働・過重労働による危険

 

Ⅲ.コミュニケーションと人間関係のストレス

 

新人看護師のストレス

山内典子(2012):看護師のメンタルヘルス支援

手術看護認定看護師教育セミナー講義資料 より

 

1.職場の人間関係

上司・先輩との関係、医師と患者、家族からの要求の間で板挟み

コミュニケーション

仕事の未熟さ

 

2.仕事の量

2交代勤務、拘束時間が長い、不慣れな夜勤

 

3.仕事の質

何をすればよいのか、仕事の仕方が分からない

点滴・処置など安全かつ確実に出来ない

新たな器械、システムへの対応、勉強会

 

手術室看護師のストレスの特徴

・より専門的な知識と技術が求められる

・診療の補助がメインであり、患者との直接的な関わりが少ない

・医師との人間関係

・苦手な看護師との手術ペア

・風通しの悪い密室での仕事

・新人における経験不足、未熟な技術

 

豊増(2004)の研究によれば、〝外来、外科、内科、救命等の部署勤務の看護師よりも手術室勤務の看護師のストレスが大きい〟といった研究結果も出ています。

 

 

千田寛子他:手術室新人看護師が抱く困難と対処法.北関東医学62(3),277-286,2012 より

・手術を担当することによる身体への影響は非常に大きい

・自己のコントロールが出来な場合が多い

としています。

実際の所、私も新人の時に手術室に配属されましたが、緊張とプレッシャーで押しつぶされそうになりながら手術を担当しました。

特に器械出しは自分の力だけで対応しなければならない部分も多く、大先輩の先生方に何とか追い付かなければといった思いで必死でした。

 

新人手術室看護師が抱く困難

千田寛子他:手術室新人看護師が抱く困難と対処法.北関東医学62(3),277-286,2012 より

 

知識・経験の無さから生じる困難

・手術室看護の覚えることの多さ

・慣れない業務への対応

・手術室看護の知識、経験の無さ

・手術室勤務体制による疲労

 

他者との関係性の構築における困難

・職場における人間関係

・患者への対応

 

特殊性を持つ手術室勤務そのものに対する困難

・間違の許されない業務

 

既卒看護師のストレス(手術室への異動)

千田寛子他:手術室新人看護師が抱く困難と対処法.北関東医学62(3),277-286,2012 より

 

・抑うつや不安、絶望等は新卒の看護師よりも多い傾向

・看護師のキャリアが自尊心を傷付ける

・適応には新卒よりも時間がかかる

 

としています。

私も手術室経験が長い中で、手術室経験の無い他部署からの異動者を何名も見てきましたが、大半は1年で再度異動になるか退職するかで、そこから手術室で長く働くようになった方はあまりいないようなイメージです。

それほど難しいのだと思います。

 

新人看護師が実践している対処法

千田寛子他:手術室新人看護師が抱く困難と対処法.北関東医学62(3),277-286,2012 より

 

情動中心の対処

・他者のと話をする

・困難を前向きに捉える

 

問題中心の対処

・学習することで知識を獲得する

・職場における人との接し方を考えて付き合う

 

量的・質的ストレッサー

量的ストレッサー

業務量過多

仕事量が多過ぎると感じたり、現在の能力・スキルレベルではこなしきれないほど仕事の水準が高過ぎて、規定の労働時間内では仕事をこなしきれないと感じる状況

 

時間的切迫

耳管に追われて与えられた職務を十分に遂行する為のゆとりが無いと感じる状況

 

質的ストレッサー

役割不明瞭

仕事の目的や目標、組織の中で果たすべき役割が明確に把握できていないと感じる状況

 

裁量権不足

能力・権力の不足などから進行している職務を主体的にコントロールしたり、仕切っていると思えない状況、また周囲に対する影響力が少ないと感じる状況

2013,豊島康仁:ストレスマネジメント、兵庫医科大学、手術看護認定看護師教育セミナー講義資料

 

カラセックの「裁量権ー仕事量モデル」に基づいた職場の4分類(吉野、2009)

職場のメンタルヘルスの改善策

『達成感・裁量権の獲得』が効果的との文献が出ています。

この〝裁量権〟に関しては行き過ぎた権利ではなく、それ相当の、という事になりますが、これを判断することも非常にシビアで難しい所になると感じます。

 

・自分のやりたい仕事であれば多少忙しくてもあまり負担に感じず、自分のペースで進めている仕事であればさほどストレスを感じない。

・単に仕事が多い、難しいことのみにストレスを感じるのではなく、むしろ達成感や裁量権がない仕事に対して強いストレスを感じている。

 

山内典子(2012):看護師のメンタルヘルス支援

手術看護認定看護師教育セミナー講義資料 より

 

若手看護師のストレス軽減のために

若手看護師は仕事のやり方や分からないことや仕事における自分の役割分担が不明瞭であることにストレスを感じている。

⇒仕事の質的負荷にストレスを感じていることに配慮し残業時間を減らすことよりも、もっと仕事の内容面を細かく指導していくことのほうが有効である。

 

としています。

しかしながら、最近の若者の動向を見るとかなり個別性があるように感じます。

上記の様な方法も提示されていますが、その若手自身がどのタイプに当たるのかしっかり見極める必要があると感じます。

 

ストレス対処能力

跳ね返す(欲求不満耐性)

・我慢してなんとかストレスを押し返そうとする力

・自らの努力と精神力により根本的な問題を解決しようとする力

 

逃がす(自己防衛機制)

・頭を柔らかくして認知(物の見方)を変える力

・もう一度よく考える、発想を転換させるなどして客観的に事態を分析して目標を再設定する力

 

抜く(カタルシス)

・少しガス抜きをして張りつめた緊張を和らげる力

・愚痴を言う、買い物、飲みに行く、旅行に出かける、スポーツをするなど個人に合った方法によりストレスを発散させる力

 

SOC:Sense of Coherrence(首尾一貫感覚)

・イスラエルの心理学者A・アントノフスキー博士により提唱された概念

・ユダヤ人強制収容所より生還した人々の特性についての調査結果

 

有意味感

・どんなつらいことにも意味を見出す力

 

把握可能感

・どんなつらいことも自分の行動の結果が関連していくという感覚(先を見通す力)

 

処理可能感

・自分が良かれと思う行動を最後まで成し遂げられるという感覚(何とかなると考える力)

上司のSOCは部下のSOCに影響を及ぼすとされています。

 

自分のストレスを知る方法

1)こころの耳:厚生労働省

4つのSTEPによる簡単な質問から職場における働く人自身のストレスレベルを知ることが出来る。

厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」に基づいている。

 

2)仕事のストレス判定図:東京大学大学院 医学研究科 精神保健学・看護学分野

職場や作業グループなどの集団を対象として仕事上の心理的なストレス要因(ストレッサー)を評価し、それが従業員のストレス反応や健康にどの程度影響しているかを判定する簡易的な方法。

 

3)労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト:中央労働災害防止協会

労働者自身が疲労の蓄積度についてセルフチェックするためのツール

 

4)職業性ストレス簡易評価表:中央労働災害防止協会

職場でどの程度ストレスを受けているのか、そしてどの程度ストレスによって心身の状態に影響が出ているのかを自分で評価できるように作成されている

 

ストレスコーピング

コーピング:「対処法」「適切に対処する」

ストレスをなくのではなく

ストレス状況、ストレス反応、人間関係に上手に対処することで自分のストレスマネジメント力を強化していく

またそのような経験を通じて成長することができると言われています。

 

ストレスコーピングの種類

問題中心型コーピング

・その人と環境との関係の在り方を実際に変化させようとする対処方法

ex.)Aさんが上司に対して、任された課題が過重なのでそれを軽減してもらおうと相談した。

 

情動中心型コーピング

・実際の状況ではなく、状況に対するその人の捉え方を変化させることで対処する

ex.)当初は無理と感じ不安になったものの、これまで自分が成し遂げて来た力に信頼を置き、いざとなったら同僚にも手伝ってもらうことで何とかこなせるだろうと、前向きに事態を捉え直すことで不安やそれに伴う心身の不具合を解消した。

 

双方のストレス・コーピングを上手に用いることができるか否か、その人のストレスへの強さを左右するもの。

またストレス・コーピングには意識的な水準のものと、無意識のうちに用いられるものとがあり、実際にはとても複雑に関連し合いながら機能している。

1.刺激に対するコーピング

ストレス発生の根源である刺激(ストレッサー)を明確にし、除去・軽減を図るための方法

A:自力で克服する

B:相手に働きかける

C:回避する・逃げる

 

2.評価に対するコーピング

非合理的思考を合理的な思考に置き換え、ストレスを生まないようにする方法

自分の受け止め方を変換する(ポジティブシンキング)

「自分だけが」と考えず「誰だって」と考える

 

3.反応に対するコーピング

顕在化したストレス反応に対処していくための方法

A:リラクゼーション

B:ストレッチ

C:自律訓練法

 

4.社会的支援というコーピング

他人の力を借りてストレスに対処していくための支援

A:刺激を除去・軽減するための社会的支援

B:評価を変えるための社会的支援

C:ストレス反応と社会的支援

 

ストレスマネジメントの具体的方法。

コーピング方法のリストアップ

積極的コーピング

積極的に解決を図る場合は

⇒その状況について、詳しく調べる 計画を立てる

周囲に相談する場合は

⇒似た経験を持つ人、職場の上司・同僚・部下、友人や知り合い、カウンセラーに相談

 

消極的コーピング

問題から離れてみる場合は

⇒しばらく問題から離れて、様子を見て積極的な解決が可能となるタイミングを待つ

解決を見送る場合は

⇒敢えて状況に身を任せることを選び、現時点での解決をあきらめる

積極的に解決を図る場合は

⇒感情的にならず早まった行動を取らないようにする

 

コーピングの絞り込みと実行の3原則

原則1:

最もランク付けの低いストレッサーに対して自信のあるコーピングから実施

原則2:

緊張感が高いからと言って、深刻度の強いストレッサーにいきなり取り組まない

原則3:コーピングの成功・失敗に関係なく、次第にランクの上のストレッサーに移行する

 

ex.)会話から興味がある分野、好きな分野を引き出す

⇒得意分野を伸ばしていく

⇒自信をつけて次のステップに繋げる

 

本音を話しやすい看護師と接触する機会を作る事が大切。

定期的な師長との面談(コーチング)の実施。

⇒個人目標と実践状況の確認

業務における課題やストレスの把握

解決に向けたアドバイス

新たな課題や活動に向けた指針

これらがモチベーションの向上に繋がる。

 

「ナラティブ」の導入

看護師としての看護観、判断や実践した事

言葉にして、伝え、語り合う

「やりがい」に繋がる

 

まとめ

・職場やスタッフが抱くストレスを把握する

・適切な対処方法を検討する

・ストレスマネジメントの実施

・評価

上記のサイクルをしっかりと展開してくことが重要。

 

最後に。

今回のテーマは難しく、少しまとめるのに時間がかかってしまいました。

そしてここに書かれたことがすべてではなく、個人間の差も大きいと感じます。

個別性を充分に考慮し、その人に合ったストレスの解消法を見出して実施していく事が必要と感じます。