手術室看護師はなぜ『使えない』と誤解されるのか|病棟との役割差を整理する

こんにちは、あるいはこんばんは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。

元手術室の看護師、現在は大学で教員をしております。

今回の記事は少し厳しめのご意見について書いていきます。

それは「手術室看護師は使えない」という意見に対してです。

結論から言うと、私はそんなことはないと思っています。

今回の記事でご理解いただければと思います。

 

手術室看護師は本当に「使えない」のか|そう言われやすい背景を整理してみる

「手術室看護師は使えない」

こういう言い方を見たり聞いたりすると、手術室で働いてきた立場としては、やっぱり穏やかではいられません。

正直に言えば、かなり引っかかります。
でも、そこで感情だけで反論しても、あまり建設的ではないのだろうとも思います。

実際には、手術室と病棟では求められる役割がかなり違います。
その違いがあまり共有されないまま、病棟応援のような「本来の持ち場ではない場面」での動きだけを見てしまうと、手術室看護師に対して「使えない」という印象が生まれやすくなるのだと思います。

今回は、手術室看護師がなぜそのように見られやすいのかを、病棟との役割差や現場の仕組みから整理してみます。

手術室のことをもう少し全体から見たい方は、手術看護まとめもどうぞ。
周術期の基礎やオペ室教育の記事をまとめています。

手術室看護師が「使えない」と言われやすいのはなぜか

私は、このイメージは個人の能力をそのまま表しているというより、働く場所の違いから生まれやすいものだと思っています。

手術室では、病棟とは違う力が求められる

手術室の看護は、病棟看護と無関係なわけではありません。
ただ、実際にはかなり性質が違います。

手術の進行に合わせて先を読むこと。
清潔・不潔を区別しながら安全を守ること。
器械や物品を整えること。
麻酔や術式に応じて観察すること。

手術室には、手術室ならではの判断と動きがあります。

そのため、病棟で日常的に求められる看護技術や患者対応の一部を、手術室看護師が同じようにすぐ発揮できるとは限りません。
逆に、病棟看護師が手術室に入って、いきなり器械出しや外回りができるわけでもないはずです。

これは、どちらが優れているかの話ではありません。
単純に、求められている実践知が違うのだと思います。

病棟応援では、本来の力を出しにくい

手術室看護師が「使えない」と見られやすい場面の一つに、病棟への応援や手伝いがあります。

病棟には病棟の流れがあります。
患者対応、ナースコール、清潔ケア、記録、処置の優先順位。
その場その場で、何を先にするのか、どこを見るのか、どのタイミングで動くのかが違います。

そこへ手術室看護師が一時的に入っても、普段の業務と違う環境の中で、最初から病棟スタッフと同じように動くのは簡単ではありません。

でも、その「慣れていない場面での動きにくさ」だけを切り取ってしまうと、「手術室看護師は使えない」という評価につながりやすくなります。

ただ、これは手術室看護師に限ったことではないと思います。
どの部署の看護師でも、自分のホームでは動けても、別の部署では最初から同じようにはいきません。

それなのに、手術室看護師だけが「ほら、やっぱり使えない」と見られやすいのだとしたら、それは少しフェアではない気がします。

昔からのイメージが残っている

手術室に対しては、昔から少し偏った見方があったようにも思います。

たとえば、手術室が「病棟でのコミュニケーションが苦手な人が行く場所」や「一般病棟が合わなかった人の配置先」のように語られることです。
もちろん、そうした見方が手術室の実際を表しているわけではありません。

でも、一度広まったイメージはなかなか消えません。
今の手術室看護は、術中看護や周術期看護として高い専門性が求められる領域です。
それでも古い認識が残っていることで、今でも誤解されることがあるのだと思います。

問題なのは能力ではなく、持ち場の違いだと思う

ここまでの話で言いたいのは、手術室看護師が本当に「使えない」のではなく、評価される場面と本来の専門性がずれている、ということです。

どの看護師でも、慣れない場所では動きにくい

病棟看護師が手術室に入れば、すぐに動けるとは限りません。
手術室看護師が病棟に入っても、やはり同じです。

それぞれの部署には、それぞれの流れ、優先順位、言葉、暗黙のルールがあります。
そこに慣れていなければ、経験年数があっても動きにくいのは自然なことだと思います。

つまり、「使える」「使えない」という言葉だけで単純に分けられる話ではありません。
その人がどの現場で、どの専門性を培ってきたのかを見る必要があります。

こういう問題は、個人の努力や性格だけではなく、教育や組織の構造で起きている部分もあると思います。
そのあたりは、看護の教育・構造まとめでも少しずつ整理しています。

手術室に病棟看護師の応援が入りにくいのにも理由がある

病棟への応援はあっても、手術室に病棟看護師が短時間の応援として入ることは、あまり多くありません。

その理由の一つは、手術室業務の特殊性が高いからだと思います。

器械出し、外回り、手術進行の把握、清潔操作、術式ごとの準備や流れの理解などは、短時間の応援で担えるものではありません。
経験のない人が入れば、本人もしんどいですし、周囲の負担も大きくなります。

これは「病棟看護師が使えない」という意味ではなく、求められる実践知が違うということです。
同じように、手術室看護師が病棟に行ったときも、本来の専門性を十分に発揮しにくい場面があります。

そう考えると、問題は「誰が優れているか」ではなく、「どの現場で培ってきた力なのか」なのだと思います。

手術室と病棟がうまく連携するために

忙しい部署同士が助け合うこと自体は、もちろん大事なことです。
ただ、互いの専門性への理解がないまま応援体制だけが続くと、誤解や不満が生まれやすくなります。

大事なのは、
「誰が使えるか」
ではなく、
「どの部署で、どんな専門性が必要なのか」
を共有することだと思います。

手術室には手術室の看護があり、病棟には病棟の看護があります。
それぞれの現場で求められる力は違いますが、どちらも患者さんにとって必要な看護です。

部署が違うだけで相手を低く見るのではなく、違いを前提に連携することの方が、現場にとってはずっと大事なのではないでしょうか。

手術室の専門性は、実習の場面で特に伝わりにくいと感じます。
学生さん向けには手術室見学で何を見ればいい?|見学前・見学中・見学後の観察ポイント
指導者の方向けには手術室実習の指導で失敗しない方法|学生を潰さない実習設計とは?もあわせてどうぞ。

まとめ

手術室看護師が「使えない」と見られる背景には、病棟とは異なる専門性、病棟応援の場面での不慣れ、そして昔から残る認識の影響があると私は考えています。

これは、個人の能力を単純に評価できる話ではありません。
むしろ、持ち場の違いをどう理解するかの問題なのだと思います。

手術室にも病棟にも、それぞれの現場で培われる看護があります。
互いを「使える」「使えない」で見てしまうと、その専門性は見えにくくなります。

だからこそ、手術室看護師への誤解を考えるときには、個人への評価より先に、働く場の違いそのものを整理して捉える必要があるのではないでしょうか。

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