
こんにちは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。
元手術室の看護師です。現在は大学で教員をしています。
最近では看護実習生の実習記録の量が多いとのご意見が散見することと、それに便乗?する形でそもそも紙で書くことがナンセンスであるいったことや、このご時世なんだからパソコンで記録したら良いのでは?といったご意見が見られます。
私の見解としては今現在(2025.8月)の現状としては実習記録のパソコンやタブレットの使用は難しいと感じます。
私情を挟みますがこの記事では看護学生の実習記録におけるパソコンやタブレットの使用について言及していきたいと思います。
パソコンやタブレットで実習記録を作成するメリット。
特にSNSで散見するのが実習記録をパソコンやタブレットで作成したら良いのでは?といったご意見。
理由については述べられていることは少ないのですが、確かにこのペーパーレスになってきている世の中、なぜ実習記録はいつまでも紙を使用しているのでしょう。
私も実習にて病院の引率をしておりますが、本学は元よりその他の看護学校でも今の所パソコンやタブレット(以下パソコンとします)を使用して実習記録を書いている学生は見たことがありません。
現状パソコンの持ち込みを許可している病棟や看護学校はどれくらいあるのでしょうか。
もしこの記事を読んでいただいている方で最新情報やご意見などありましたらお問い合わせからぜひご連絡ください。
確かにパソコンを使用することで、追加修正をする際にいちいち消しゴムで消す必要はありませんし、手書きの文章よりも綺麗に書くことが出来ますし、何枚も紙がかさばることもありません。
持ち運びもパソコン1台あれば良いですし、何枚も紙を管理する必要もありません。
実際の所、私が認定看護師の研修を受けていた時は実習記録はパソコンでした(結局紙で印刷して指導者には見せていました)。
パソコンを使用した実習記録の作成も十分にメリットがありそうです。
なぜいまだに紙の実習記録なのか。
通信機能のあるパソコンだと情報漏洩の可能性がある。
良く言われる理由の一つにこれがあります。
良く研究で、通信機能のないパソコンにデータを保管して…なんて文面を書いたことがある方もいるかと思います。
倫理審査でも突っ込まれる部分になります。
基本的にパソコンを使用している方で、通信機能をオフにしている(ネットやメールを一切やらない)なんて聞いたことがありません。
それだとパソコンを使用している意味が無いですしね。
それでは何が問題になりやすいのでしょうか。
メールで送信すること。
実際の所、患者情報を学生間で情報共有して送ってしまったという事案もあります。
メールに限らずLINEなどのSNS関係でも発生したことのある事案です。
私も担当した学生がLINEで送ってしまったことがありました。
当然問題行動ですので、教授会など会議で大学としてどう処分するのか検討がされました。
そんなことをするわけがない、注意すれば良いのだといった意見も聞かれそうですが、実際の所起きている案件です。
ウイルスの可能性
例えばそのパソコンがウイルスに侵されてしまい、患者情報が流出してしまう可能性があります。
こちらもそんなばかなと思うかもしれません。
ちゃんとセキュリティしてれば大丈夫だよとも思うかもしれません。
しかし個人情報を守るといった点では何が起こるか分かりません。
病院で扱っている電子カルテのセキュリティと一般家庭のセキュリティでは少し訳が違います。
研究をやられている方は聞いたことあるかも知れませんが、やはり通信機能を持っているパソコンのデータ管理については倫理審査でも良く突っ込まれている部分です。
良いか悪いかはさておきです。
実際病棟でパソコンで記録をするとどう思うか。
では実際に学生がそれぞれパソコンを病棟に持ち込み実習記録を書き始めたらどう思うでしょうか。
私のなりの予想を書きたいと思います。
そもそも病棟に持ち込み禁であることが多い。
実習をする上で必ずと言って事前に病院の看護部長や実習担当者、各病棟の師長や実習指導者と打ち合わせ会議をします。
そこで一応聞いています。
パソコン、ipadなどのタブレットの持ち込みは可能か、と。
大体NGです。
最近の教科書がペーパーレスになって電子教科書になっている旨を説明しても、通信機能をオフにして実習グループに1台のみ許可される、といったパターンが一番多い気がします。
実習病院からNGが出る以上、持ち込みをすることは難しいです。
ここで意に反して持ち込むと実習中止になりかねませんし、あまり良い言い方ではありませんがご機嫌を損ねることは出来ません。
学生控室で学生がパソコンを利用していると印象が悪い?
タダでさえ目立つ学生。
一挙手一投足を見られている感じがします。
少しでも雑談をしようものならすぐに報告されて直すように注意されます。
その様な状況で、学生がパソコンを使用していたらどうでしょうか。
あまり良い印象を受けないのでは感じます。
特にタイピングの音がカチカチしていたら余計気になるのではないかと思います。
場所がかさばる。
学生が一人一人パソコンを病棟に持ち込んだらどうでしょうか。
一人一人がパソコンを広げている場所の確保は難しいかもしれません。
まずは病棟スタッフさんの作業スペースの確保が最優先と思います。
そこに学生がパソコンを使用するスペースの確保は出来ない病棟の方が多いのではないかと思います。
実習指導者への記録の提出が難しい。
パソコンをその都度見せるといったことも難しいと思います。
その都度印刷して紙にするといった対策が考えられますが、その都度印刷をしていただける病棟も少ないと思います。
またその都度手間がかかりますし、だったら手書きの紙を見せた方が時間的にも早く済みます。
病棟の実習指導者へ記録の提出をしない、といった方針であれば可能かもしれませんが、それで病棟の指導者は満足するでしょうか。
手間を考えるとやはり難しく感じます。
現状やはりパソコンでの実習記録は難しいと考える。
以上の理由から現状病棟でパソコンを使用しての実習記録は難しく感じます。
これを実現するには実習病院、病棟のご協力が多大に必要と感じます。
そしてやはりこの問題をクリアできない一番の問題は、実習病院の許可が下りないことです。
いくら大学を責めても、実習病院で許可が下りなければ実際行う事は出来ないのです。
最近の比較的若い年齢層であれば学生のパソコン持ち込みに関しては寛容かもしれませんが、その方々が病院の方針にまで口を出せるようになるまであと何年もかかります。
よってこの問題もまだまだ先の話になりそうです。
実習記録の量が多いという話はまた今度。
そこで出てくるのがそもそも実習記録を少なくしろというご意見。
こちらも今回の話とは趣旨が外れますのでまた別の記事で見解を書いていきたいと思います。
今言えることは私の見解として実習記録の量としては〝妥当〟と感じています。
正直、これ以上減らすことはかなり慎重に考えなければならないと思っています。
最後に。
将来的には実習記録もパソコンになることは十分に考えられます。
しかし今の現状はかなり厳しい事と、これをクリアするには研究の倫理審査まで影響することにもなりかねないと感じています。
もしかしら実習記録用にタブレットとして開発されるととんでもない発明になるかもしれません。
そして学生が実習記録をパソコンに出来ない理由が、教員や看護学校だけの問題では無い事をご理解いただきたいです。
いくら看護学校側がパソコンの記録を推奨しても実習病院で許可が下りないと実施は出来ません。
お互いが学生がより良く実習が出来るように考えつつ、実習記録の方法も変わっていくことができたらと思います。