
こんにちは、あるいはこんばんは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。
元手術室の看護師で、現在大学にて教員をしております。
今回の記事では、4年制と言われる大学と3年制の短大や専門学校で何が違うのか整理してきたいと思います。
大卒と専門卒・短大卒の新人看護師に違いはあるのか|「どちらが使えるか」という見方を整理してみる
大卒と専門卒・短大卒の新人看護師では、どちらが現場で動けるのか。
この話題は、看護の世界ではたびたび出てきます。
SNSでも現場でも、割とよく見かける話だと思います。
ただ、私はこの「どちらが使えるのか」という聞き方自体に、少し違和感があります。
もちろん、卒後すぐの動きやすさに差を感じる場面はあるのかもしれません。
でも、新人看護師の力は卒業した学校の種類だけで決まるものではないですし、そもそも看護基礎教育だけで即戦力を完成させることには限界があります。
今回は、大卒と専門卒・短大卒の違いを単純に比べるのではなく、学校で育ちやすい力の違いや、現場での評価のされ方という視点から整理してみたいと思います。
こういう問題は、個人の努力や学校名だけで説明できるものではなく、教育の設計や評価のされ方にも関係しています。
そのあたりは、看護の教育・構造まとめでも少しずつ整理しています。
そもそも新人看護師を「即戦力」として見るのは難しい
まず前提として、看護学校を卒業したばかりの新人看護師を、すぐに現場で一人前に動ける存在として期待するのは、やはり難しいと思います。
看護学校では、知識も技術も学びます。
ただ、まったくの初学者が限られた年数の中で学べることにはどうしても限界があります。
どんなに頑張ってきた学生でも、卒業したその日から完璧に動けるようになるわけではありません。
大学でも専門学校でも短大でも、それは大きくは変わらないと思います。
これは学生の努力不足という意味ではありません。
単純に、看護という仕事がそれだけ複雑で、短期間で完成するようなものではないからです。
だからこそ、新人看護師を最初から「使える」「使えない」で見てしまうこと自体に、少し無理があるように私は感じています。
学校ごとの教育内容で、出やすい力の違いはあると思う
とはいえ、学校ごとの教育内容の違いによって、卒後すぐに出やすい力の傾向はあると思います。
たとえば、技術演習をしっかり経験してきた学生は、最初の現場には比較的入りやすいことがあります。
実際に手を動かしてきた経験がある分、現場でも動きのイメージを持ちやすいからです。
一方で、学校によっては技術演習以上に、看護過程やアセスメント、援助の根拠を考えることを重視している場合もあります。
その場合、最初の実践はゆっくりでも、患者の問題を捉えたり、なぜその援助が必要かを考えたりする力に強みが出ることがあります。
つまり、「大学卒だからこう」「専門卒だからこう」と一律に言えるものではなく、実際にはどんな教育を受けてきたかによって、出やすい力が少し違うのだと思います。
技術演習が多いと、最初の実践には入りやすいことがある
現場でよく言われるのは、技術演習を多くやってきた学生は、卒後の研修や日々の業務に入りやすいということです。
基礎看護学などで経験してきたことが、そのまま現場で役に立つ場面は確かにあります。
そのため、入職してすぐの時期には「動ける」「実践に入りやすい」と評価されやすいこともあるでしょう。
ただ、それでもすぐに一人前になれるわけではありません。
あくまでスタート時点で入りやすい、という話であって、そこから先も学び続けることは当然必要です。
考える力やアセスメントに強みが出る場合もある
一方で、最初の実践はゆっくりでも、患者のアセスメントや問題点の抽出、援助の根拠を考えることに強みを持つ学生もいます。
こうした力は、卒後すぐの時点では少し見えにくいかもしれません。
でも、長い目で見ればとても大切な力ですし、技術だけでは補えない部分でもあります。
働き始めれば、技術援助は嫌でも経験していきます。
その中で、考える力や根拠を押さえる力があることは、あとからかなり大きな強みになることもあります。
結局のところ、実践に入りやすいことも大事ですし、考える力があることも大事です。
どちらか一方だけが優れている、という話ではないのだと思います。
私が引っかかるのは、「どちらが使えるか」という見方そのもの
ここでいちばん引っかかるのは、やはり「どちらが使えるのか」という見方です。
卒業したばかりの新人看護師を、学校の種類だけで「使える」「使えない」と分けるのは、やはり乱暴だと思います。
実際には、同じ学校を卒業していても個人差はありますし、現場に出てから伸びる力も人それぞれです。
それに、卒後すぐの時点で評価されやすいのは、どうしても「身体が動くか」「その場の実践ができるか」といった部分になりやすいです。
でも、それだけで看護師としての価値が決まるわけではありません。
最初は動きがぎこちなくても、考える力があり、学び続ける姿勢がある人は、時間をかけて大きく伸びていくことがあります。
逆に、最初は動けていても、その後の学びが止まってしまえば伸びにくくなることもあります。
だからこそ、「どちらが使えるか」を競わせるような見方よりも、
「どんな力が今育っていて、これから何を伸ばしていく必要があるのか」
という視点の方が、ずっと大事なのではないかと思います。
新人看護師の時期に大事なのは、比較よりも成長だと思う
新人看護師の時期は、できないことがあって当然です。
現場で「使えない」と評価されたとしても、それを必要以上に気にしすぎなくてよいと私は思います。
そもそも看護学校は、新人をいきなり完成された即戦力にするためだけの場所ではありません。
基礎を学び、考え方を学び、現場に出てから育っていくための土台を作る場所だと思います。
だから大切なのは、今どれだけ完璧にできるかではなく、これから知識と技術をどう積み重ねていくかです。
もし技術面に不安があるなら、経験を積みながら少しずつ身につけていけばよいですし、逆に考える力に不安があるなら、根拠を押さえながら一つずつ学んでいけばよいと思います。
それぞれに強みと課題があって、それを自分で理解しながら伸ばしていくことの方が大切なのではないでしょうか。
専門卒・短大卒からその先の進学を考えている方は、専門卒・短大卒の看護師が大学院へ行く方法もあわせてどうぞ。
まとめ
大卒か、専門卒・短大卒かという違いだけで、新人看護師を「使える」「使えない」で分けることはできないと私は思います。
実践に入りやすい学生もいれば、考える力に強みを持つ学生もいます。
学校ごとに育ちやすい力の傾向はあるかもしれませんが、それだけで優劣が決まるわけではありません。
新人看護師に必要なのは、卒業区分だけで比べられることではなく、今ある強みを活かしながら、足りない部分を少しずつ補っていくことだと思います。
だからこそ大切なのは、どちらが上かを決めることではなく、それぞれの強みと課題をどう育てていくかを見ることなのではないでしょうか。
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