
【看護診断】NANDA-I「North American Nursing Diagnosis Association International」の
新しいラベルを考えてみた【手術看護】
こんにちは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。
皆さんの病棟や手術室では看護問題を導き出すツールとして何を使用していますか。
NANDA-I「North American Nursing Diagnosis Association International」を使用している部署も少なくないと思います。
私の場合は新人時代の病院ではNANDA-Iでしたが、次に就職した病院ではNANDA-Iは使用していませんでした。
認定看護師の研修にいった際に面白い授業がありましたので紹介します。
NANDA-Iの診断ラベルは新しく作成しても良い。
認定看護師の研修の際に言われたのですが、まさに目が点でして。
どうやらNANDA-Iの診断ラベルは新しく独自で作成しても良いとのことでした。
本にはいくつかのラベルが記されていて、この中から選択するのものばかり思っていたのですがどうやら違うようです。
名前は伏せますが、NANDA-Iの作成に携わったことのある先生がおっしゃることでしたので間違いないのでしょう。
そして良い新しい診断ラベルを考えたら自分で自由に使用して良いそうです。(当時私が聞いたことですので現在出来なくなっていたら申し訳ありません)
良い診断ラベルを開発したら日本看護診断学会まで報告してほしいとも言っていました。
そこで、NANDA-Iの新しい診断ラベルを開発してみました。
NANDA-Iの診断ラベルの例。
診断ラベルの例
例えばこんな診断ラベルがあります。
#不安
#非効果的呼吸パターン
#非効果的組織循環
#組織統合性障害
#排尿障害
#誤嚥リスク障害
#歯生・口腔粘膜障害
#急性混乱
#コミュニケーション
などなど
しかしながら手術看護に応用するには微妙にズレてる気がしないでもない。
看護計画としての使用例
看護計画として立案するにはこんな感じになると思います。
・側臥位での長時間手術、長期臥床に関連した周手術期体位性身体損傷リスク状態
・高度な手術手技に関連した出血リスク状態
・長時間手術、手術による身体損傷に関連した感染リスク状態
などなど
何となく手術看護っぽくなりました。
手術看護で使えそうな診断ラベル
#周手術期体位性身体損傷リスク状態
#周手術期低体温リスク状態
#感染リスク状態
#急性疼痛リスク状態
#不安
#ボディイメージ混乱リスク状態
#ラテックスアレルギー反応リスク状態
#出血リスク状態
#安楽障害リスク状態(局麻?)
#急性混乱
#誤嚥リスク状態
#歯生障害リスク状態
などなど
この辺りでしょうか。
手術室で使えそうな診断ラベルで看護問題・計画を立案してみた。
ここでNANDA-Iの診断ラベルを用いて看護問題や計画を立案してみました。
#周手術期体位性身体損傷リスク状態
定義
侵襲的処置や外科手術の間に体位や機材が原因で、 想定外の解剖学的変化や身体的変化が起こる危険のある状態
危険因子
□見当識障害 □筋力低下
□浮腫 □肥満
□るいそう □麻酔による知覚障害/認知障害
看護目標(例)
①手術中の体位による皮膚損傷、粘膜損傷、神経、 関節可動域障害がない
1)皮膚圧迫部位の皮膚損傷がない
2)神経障害症状がない(しびれ感、疼痛がない)
3)四肢の関節可動域が手術前と同程度である
②下肢静脈血栓の症状がない
1)下肢の腫脹がない
2)下肢を動かしたときの疼痛がない
③DVT、VTEへの適切な予防策が受けられる
看護計画(例)
《O-P》
①下肢皮膚状態(皮膚異常の有無,皮膚色,腫脹,浮腫の有無と程度,下肢疼痛の有無)
②ホーマンズ徴候の有無と程度
③弾性ストッキング,間欠的空気圧迫装置,弾性包帯の着用状態(しわ,たるみ,局所の圧迫)
④神経麻痺症状の有無と程度(手指の動き、足趾の動き、しびれ感の有無)
⑤塞栓症の症状(足背動脈,膝窩動脈の拍動と左右差の有無・四肢の色調変化と左右差など)
⑥肺塞栓症の症状(頻呼吸,浅表性呼吸,急激な呼吸困難,急激な血圧低下,痰,血痰の有無,胸 痛の有無,顔面の浮腫など)
⑦バイタルサインの変化(体温,血圧,脈拍,呼吸数,胸郭の動き,SpO2など)
⑧皮膚状態(発赤,腫脹,皮膚剥離など)
⑨末梢皮膚状態(チアノーゼ,冷感の有無)
⑩皮膚圧迫部位の状態
⑪関節可動域(術前と同程度であるか)
⑫皮膚刺激となる因子(消毒薬,シーツのしわ,電極コード,点滴ルート,挿管チューブ,マンシェット,膀胱留置カテーテルなど)
⑬湿潤の有無と程度(便,尿失禁の有無)
⑭対極板貼付部の熱傷の有無
《T-P》
①弾性ストッキングの着用状態を確認し,適切に着用する
②チューブの圧迫や神経に当たっていないか確認しながら間欠的空気圧迫装置を装着する
③皮膚異常が生じた場合は,主治医に報告し対策をとる
④主治医の指示により間欠的空気圧迫装置の継続,中止を行う
⑤体位保持物品の準備
⑥除圧用具の準備
⑦医者と共に良肢位の保持を行う
⑧皮膚の引っ張られている部位,圧迫部位を補正する
⑨体位固定時にコード,ルート類が身体の皮膚に直接当たらないように保護する
⑩対極板は,人工物挿入の有無を確認し,貼付面積の広い部位を選択して確実に貼付する
⑪消毒液などでシーツが湿らないように,消毒時は体側の下面に吸水シーツを敷き,消毒後に取り除く
⑫発赤好発部位である,腸骨部・大転子部にパーミロールを貼る
⑬術中ローテーションによるズレや脱落を補正する
⑭対極板・絆創膏・心電図電極の除去は刺激を最小限にする
⑮患者に合った絆創膏や消毒液を用いる
⑯病棟看護師に,皮膚損傷,神経損傷の有無,圧迫部位の継続観察について申し送り,経過観察を依頼する
⑰手術終了時,皮膚の水泡・発赤の有無を確認する
⑱手術後,消毒液,滲出液,血液を取り除く
⑲体圧計を用いて褥瘡好発部位(頬部、耳介部、肩部、腸骨部、大転子部、膝部、内・外顆部)と神経圧迫部位(顔面神経、上腕神経、橈骨神経、尺骨神経、腓骨神経)の圧を測定し、必要以上の圧がかかる場合は除圧を行なう
ここに個別性が出せるともっともっと良いですね。
個別性を出すにはカルテの情報だけでは捉えきれないかもしれません。
術前訪問で患者さんとじっくり話してみることが必要と感じます。
《E-P》については術中の看護計画と想像して、計画を立てていません。
全身麻酔の前後に関わる看護計画の場合、《E-P》も立案する必要があります。
いずれ手術看護での看護計画の内容をまとめていきたいと思います。
#局所麻酔中毒リスク状態
定義
投与される局所麻酔薬の血中濃度が身体に悪影響を及ぼす危険のある状態。
危険因子
□局所麻酔薬を使用する手術
□脱水 □肝・腎機能低下
□高齢者・小児
看護計画(例)
【術前】
【OP】
1.体温、心拍、呼吸、血圧、心電図波形
2.診断・術式
3.既往歴
4.皮膚状態(発疹、発赤)
5.中毒症状との鑑別をするための普段の様子(興奮、多弁、不安など)
6.検査データ
7.患者の痛みの程度と閾値
【TP】
1.病棟看護師や麻酔科医師と、情報共有を行う。
【EP】
1.術中に、異常を思わせる症状や兆候があれば、すぐに知らせるように説明する。
【術中】
【OP】
1.体温、心拍、呼吸、血圧の変化、心電図波形
2.呼吸器系症状の有無と程度(呼吸困難、チアノーゼの有無、喘鳴、気管支痙攣、咽頭 浮腫)
3.中枢神経系症状の有無と程度(あくび、口唇のしびれ、視野障害、頭重感、耳鳴り意識喪失、
痙攣)
4.循環器系症状の有無と程度(動悸、胸部不快感、頻脈、心窩部痛)
5.消化器系症状の有無と程度(悪心、嘔吐、胃部不快感、心窩部痛)
6.既往歴
7.皮膚状態(発疹、発赤)
8.精神症状の有無と程度(興奮、多弁、不安)
9.検査データ
10.患者の痛みの程度と閾値
11.麻酔投与量
【TP】
1.全身状態のモニタリング(生体モニターや症状の有無、変化を観察する)
2.医師の指示による輸液、薬物管理
3.患者に痛みの有無を確認し患者の疼痛状況を把握する。
4.麻酔の追加投与毎に患者に声掛けを行い、異常の有無を確認し必要時報告する。
5.中毒症状出現時は医師の指示に従い処置を行う
6.急変時は他の医師や看護師などの応援を呼び人員を確保する。
【EP】
1.異常を思わせる症状や兆候があれば、すぐに知らせるように説明する
【術後】
【OP】
1.体温、心拍、呼吸、血圧の変化、心電図波形
2.呼吸器系症状の有無と程度(呼吸困難、チアノーゼの有無、喘鳴、気管支痙攣、咽頭 浮腫)
3.中枢神経系症状の有無と程度(あくび、口唇のしびれ、視野障害、頭重感、耳鳴り意識喪失、 痙攣)
4.循環器系症状の有無と程度(動悸、胸部不快感、頻脈、心窩部痛)
5.消化器系症状の有無と程度(悪心、嘔吐、胃部不快感、心窩部痛)
6.皮膚状態(発疹、発赤)
7.精神症状の有無と程度(興奮、多弁、不安)
【TP】
1.全身状態のモニタリング(生体モニターや症状の有無、変化を観察する)
2.医師の指示による輸液、薬物管理
3.中毒症状出現時は医師の指示に従い処置を行う
4.急変時は他の医師や看護師などの応援を呼び人員を確保する
【EP】
1.異常を思わせる症状や兆候があれば、すぐに知らせるように説明する
いかがでしょうか。
こちらは局所麻酔の手術をイメージして作成しました。
一から作成するのはなかなか時間がかかりますし、難しいですね。
これが正しいとも限らない。
自身で自由に作成しても良いとはなかなかハードルが高い事かも知れません。
購入はこちら。
最後に。
今回の記事で取り上げた看護診断は私が認定の研修中に研修生のみんなで考えたものです。
正直まだまだ足りない所があると思います。
しかしながら、このような事を考えることは凄く学びになりましたし、看護師として成長できる大きなキッカケになると感じました。
特に手術室の看護師は看護計画を考えることはほとんど無いと思います。
手術の1件1件すべてにこの分量で記録を書いていたら到底業務が滞ります。
しかし、頭の中では考えながら手術看護を展開していたと思います。
アウトプットできる機会を多くしていく事も課題の一つかと思います。
今回取り上げた看護診断は皆さんの中でも賛否両論あるかと思います。
みなさんのご意見ご感想も随時受け付けております。
お問い合わせからぜひご連絡ください。