
こんにちは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。
元手術室の看護師です。現在は大学で教員をしています。
この記事では看護学生向けに基礎看護学実習に向けた事前準備やどんなことを勉強しておくべきか、その心構えなどを中心に書いていきます。
基礎看護学実習の内容について。
一番最初の実習。
中には入学してすぐの実習を売りにしている看護学校もあるようですが、大体入学してから2、3ヶ月くらいすると初めての実習があると思います。
病院や施設に初めて看護実習生として入り、実際に患者さんや施設の利用者さんと関わることになります。
初めて、ということもあり学生からは非常に緊張するといったことをよく聞きます。
朗報になるかもしれませんが、初めての実習に関しては学生がほとんど〝手を出す〟ことはありません。
この〝手を出す〟ということは、例えば清拭をする、手浴足浴をする、バイタルサインを測定するといったところです。
学生と言えば血圧や脈拍測定といったバイタルサインの測定をすること目玉になっていますが、一番最初の実習ではバイタルサインの測定に関してもまだ習っていないといった状況がほとんどでしょうから、ほとんど手は出せないと思います。
つまり基本的に〝見学〟での実習となります。
レベルの高い知識や技術を求められることはほとんど無いと考えて良いでしょう。
教員も事前の実習打ち合わせで見学実習が主になることや、実際あまり知識や技術が身に付いていないことを伝えていると思います。
あとは実習指導者の認識にもよりますが、やはり基本的にはシャドーイングがメインで、看護師の後ろをついていくような形で見学していく事がほとんどと考えて良いと思います。
事前に勉強・準備しておいた方が良い事。
ほとんどが見学ということで安心したかもしれませんが、では全然勉強せず、準備もせず舐めてかかって上手くいくほど甘いものではありません。
それなりにちゃんと勉強や準備をして臨む必要があります。
今までに習った事のある技術について押さえておく
一番最初の実習の実施期間は入学してから早くて1~2か月、大体3か月辺りに実施することが多いと思います。
つまりは遅くても前期の授業の集大成、夏休み前に一度実習をする、といった具合です。
恐らくほとんどの看護学校で実施するのが、看護技術論といった形で、
・手洗い、スタンダードプリコーション
・ベッドメイキング
・ポジショニング、体位変換
・車椅子、ストレッチャーの移乗と移送
・清拭
・手浴、足浴
・排泄の援助
といった辺りまで演習で習得すると思います。
しかし、一番最初の実習ではこれらの援助を実際に行う事は少ないと思います。
(看護学校によって違いがあるかもしれません。自身の看護学校の方針をご確認ください。)
肝心のバイタルサイン測定もまだ習っていない状況にある可能性も大いにあり得ます。
前述した通りシャドーイングや見学がメインになるかと思いますが、見学をしながらも今まで習った看護技術について質問をされたり、もしかしたら安全を確保の上実際に少し関わらせていただけるかもしれません。
さらに実際に看護師が援助をしている様子を見ることが出来るので、手順や目的などをしっかり頭に入れておけば見学した時の学びがより深くなると考えます。
手洗い・スタンダードプリコーションは出来るようにしておこう。
恐らくほとんどの看護学校では手洗いとスタンダードプリコーションに演習をかなり早い段階で実施していると思います。
それは看護援助をしていく上で基本中の基本になるからです。
特に手洗いに関してはこの先もずっと行っていく事です。
これらに関しては1年生の1番最初の実習と言えど、きっちり押さえておきたい項目です。
実際のところ、実習施設の実習指導者さんに1年生の現状を伝えるときに、
「手洗いとエプロン手袋の装着に関しては完璧にできます!」
とアピールすることが多いです笑
何かしらできるアピールをする際に一番最初に習っているであろう手洗いとスタンダードプリコーションの話はしやすい訳です。
カンファレンスの進め方・やり方を知っておく。
看護実習の中でも学生が緊張することの一つに、実習指導者さんを交えたカンファレンスがあります。
毎日の締めとして行われることも多いと思います。
1年生ですのでカンファレンスの進め方に関してもそこまでレベルの高さを求められることは少ないと思います。
ですが、ここでスムーズにカンファレンスを進めることができれば評価はうなぎ上りです。
ただの感想の言い合いで終わらせずに、司会進行や書記などの役割を決め、学生主体でカンファレンスが出来るようにしてみましょう。
カンファレンスの進め方については別記事で書こうと思います。
挨拶の仕方を頭に入れておく。
1年生と言えど、挨拶は必須です。
特に実習が始まる時と終わる時には看護部長に直接挨拶をすることも多いでしょう。
その際にはあまり恥の無い挨拶を心掛けたいです。
例えば
「○○大学から来ました、1年生の学生○○名です。本日から○○日実習をさせていただきます。今回の実習の目標は○○○○です。どうぞよろしくお願いいたします。」
などといった挨拶になります。
できれば今回の実習でどんなことを学びたいのか、最終日の挨拶では今回の実習でどんな学びを得たのか、追加して挨拶できれば完璧です。
挨拶もこの先実習する時は常に必要なスキルです。
むしろ上学年になってからできないとなると恥ずかしい思いをするかもしれないので、まだ失敗が許される1年生のうちに挨拶の練習をしておいても良いかもしれません。
1日中立って歩き回る体力をつける。
基本的に1日中、実習指導者さんの後ろを付いていきます。
最近の学生の傾向なのか、学内で演習をする際2コマ連続で実施することが多いのですが、その2コマが持たずに疲れてしまう傾向が見られます。
正直、その体力では実習中1日持つかどうか心配になります。
実習中は1日中立つことになりますし、かなりの歩数を歩く事にもなります。
疲れたので休ませてください、とはなかなか言いにくい雰囲気にもなります。
1日耐えることが出来るように今のうちから体力をつけておきましょう。
メモを取る癖をつける。
実習中に実習指導者からのアドバイスや、実際の援助などを見て参考になる部分などが沢山あると思います。
その際にメモを取る癖をつけておきましょう。
一つは後々のカンファレンスや振り返りなどで思い出すことができること、メモを取る姿を見せることでやる気があるアピールをすることが出来ると考えます。
コミュニケーション能力を鍛える。
最初の実習では手を出せることが無い分、患者さんとのコミュニケ―ションに時間を多く取られそうです。
実際に患者さんとコミュニケーションを取ることも今回が初めてになると思います。
基本的にはそれなりの年配の方とお話をすることになります。
自身のおじいちゃんおばあちゃん世代の方々になると思います。
自身の家族とは違う、年配の方々と普段からコミュニケーションを取っている人は特に困ることは無いかもしれないですが、普段あまりコミュニケーションを取ったことの無い人は、ここでも少し戸惑うかもしれません。
もし事前にその様な機会を設けることが出来れば経験しておくと実際の実習でも困らないかもしれません。
2回目の実習について。
実施される時期にもよりますが、2回目の実習に関しては1年生後期の締めに実施されることが多い印象です。
この頃になると演習に関してはほとんど実施済になっていると思いますので、基本的には学生として実施できる基本技術は実習でも実施できる、といった感覚になります。
特にバイタルサインの測定に関しても実施していく事になると思います。
事前に勉強・準備しておいた方が良いこと。
演習で習った技術演習の内容全般(特にバイタルサインの測定)。
1番最初の実習ではほとんど手を出すことは無く、見学がメインだったと思います。
ですが今回の実習からいよいよ援助を実施していきます。
特に今回の実習の目的の一つにバイタルサインの測定があると思います。
中には演習で練習した他に、特に血圧の測定に関しては確認テストみたいのことを実施して実習前に出来るかどうか確認する場合もあります。
その他、清拭、環境整備、手浴、足浴、おむつ交換、リネン類の交換、ベッドメイキングといった所は実施していく事になります。
学生一人で実施することは無く、実習指導者さんや教員と一緒に実施することになりますが、主体で動くのは学生になります。
1番最初の実習に比べてかなりハードルが上がったと思います。
とは言え援助を実践することは初めてになりますので、この先の成人実習などに比べて周りの目も優しいと思います。
文字通り「基礎実習」ですから、あくまで患者さんの安全・安楽を優先させてその中で学生がどこまで実施できるのか、といったところになりそうです。
看護過程の実践。
ここで最初の実習とは大きく違うことのもう一つが、患者さんの状態をアセスメントして問題点を導き出し、自分なりに必要な看護を考えて実践していく事、つまり看護過程の実践が追加されます。
つまりはこのタイミングで授業でも看護過程を習う事になります。
授業ではペーパーペイシェントですし、実際の患者さんを相手にすることは今回初めてになりますので非常に難儀すると思います。
実はここは躓きポイントの一つでもあります。
授業でも解説はしているのですが、そこだけでマスターすることは到底無理だと思います。
実習での患者さんとの関わりを通して学んでいく事になります。
実習前に完璧にする必要はありませんが、少しでも患者さんへ有益になるような援助が出来る様、しっかりアセスメントできる様、勉強しておくことが必要になります。
実習では教員は元より現場の実習指導者さんからも指導が入ると思います。
まったく勉強しないまま実習に入ると大変後悔すると思います。
しっかり予習復習をしてから臨みましょう。
基本的に1番最初の実習より高いレベルを要求される。
基本的には1番最初の実習で経験したことのさらに上のレベルを求められることが多いでしょう。
見学メインだった実習から実際に自身で患者さんに援助をしなければなりません。
1年生なので物凄く高いレベルを求められるわけではありませんが、確実に上のレベルを求められます。
自身が1年生の前期よりも成長していなければこの課題をクリアすることは難しくなります。
その為にも日々の学修でもしっかりと勉学に励んでおきましょう。
(初めて)実際の受け持ち患者さんを持つことになる。
今回の実習でもう一つ大きなことは、実際に受け持ち患者さんを持つという事になります。
その患者さんの看護過程を展開することになります。
つまりは学生一人一人違う患者さんを受け持つ事になります。
学生間で相談することはとても良い事ですが、実際のアセスメントに関しては一人一人違う訳です。
まったく同じ記録にはならないです。
友達の記録を丸パクリするなどは避けましょう。
受け持ち患者さんを持つという事は、その実習期間中に一人の患者さんのアセスメントをじっくりできる事にもなります。
これを良い機会と捉えて看護過程を進めていきましょう。
chatGPTでの記録について。
最近、学生間でchatGPTを使用してのレポートや記録の提出をしていることがあるようです。
ですが教員サイドに立ってそのレポートや記録を読んでみると、脈絡がおかしかったりちゃんとした文章になっていなかったり、アセスメントも充分に出来ていなかったりします。
危惧する所は、患者情報をchatGPTに流すことによって何かしら弊害が起こる可能性があります。
下手したら情報漏洩で処分対象にもなります。
chatGPT事態の使用は禁止しておりませんが、必ず目を通して確認することと、必要以上の患者情報をネットに晒す事の無い様に注意しましょう。
学生を相手に記録のサポートでお小遣い稼ぎをしている方がいる。
非常に危険です。
それなりの記録のサポートを受けるには患者情報を提供しなければなりません。
前述した通り、情報漏洩の程度によっては処分対象になります。
学生だから許されるといった事はありません。
お小遣い稼ぎをしている看護師も処分対象になり得ます。
下手したら停学どころか退学です。
非常に注意が必要です。
これに関しては私も記録の書き方のコツに関しては記事を書いていますが、その患者さんの個別性までを含めた記録のサポートは出来ません。
一番は実習の引率をしてくれている担当教員に相談することを強くお勧めします。
安易な気持ちでお金を出せばクリアできると考えて、退学処分といった事にならない様にズルは考えずにしっかりと学修しましょう。
提供する大人も自身の資格はく奪も充分に考えられる事案になります。
慎重な行動を心掛けていただきたいです。
最後に。
基礎実習は基本的にそこまでレベルの高さを求められる訳ではありません。
しかしだからと言って舐めてかかるととんでもないことになります。
基本的に単位を落とすことはありません。
最低限の挨拶や学ぶ姿勢を持っていれば心配することは無いでしょう。
より良い実習の学びになるように事前に勉強や準備しておいた方が良いことをまとめました。
ぜひ参考にしていただいて、より良い実習にしていきましょう。