【看護学生】術後合併症に対する考え方のヒント。

【看護学生・病棟看護師向け】術後合併症に対する考え方のヒント。

 

こんにちは。一匹兎(@pepeopecn)と申します。

今回は術後合併症についてまとめてきたいと思います。

この記事では一つ一つの術後合併症について掘り下げるのではなく、手術を受ける患者さんも受け持った時の術後合併症について理解して、看護過程に生かしていただきたいと思い作成しています。

それぞれの術後合併症については今後作成してきたいと思います。

 

この記事の内容
・術後合併症についてどの様なものがあるか考え方のヒントが見つかる。

術後合併症には決まった所見と出現しやすい時期がある。

※看護roo!より抜粋
こちらはよく見かける看護roo!より抜粋した図です。術後合併症の所見と出現しやすい時期がまとめてあります。
こちらの図の他にも多くの似たような図がありますが、この記事ではこちらを採用します。
ここに書いてある術後合併症の所見についてはまず必須で覚えた方が良いです。

術後合併症が発生しやすい時期。

看護roo!の図にあるように術後合併症には発生しやすい時期がそれぞれあります。

例えば以下の様な感じです。

術後合併症が発生しやすい時期

1.術後出血:術直後~48時間以内
2.縫合不全:術後4~10日まで
3.術後疼痛:術直後~5日以内
4.術後感染症:手術部位感染は、術後30日以内 (人工物を挿入する手術では1年以内)
5.呼吸器合併症:無気肺は術後3日以内 肺炎は術後3~5日ごろ
6.深部静脈血栓症(DVT):術直後~1週間程度
7.術後せん妄:術後1~2日程度してから出現し、1週間前後続く
8.術後イレウス:術後3日~7日ごろ

すべての患者さんにおいて図のように経過するとは限りませんが、一般的にはこのように経過することが多いでしょう。

 

例えば、術直後から縫合不全やイレウスの症状は出にくいですし、術後出血は基本的には数日で収まります(出血量にもよります)。

この様な一般的な経過を知っているだけでも、術後何日目かでどこに着目すればよいか意識できますし、知っていることで自信を持って観察することができると思います。

それぞれの観察ポイントもしっかり押さえておきましょう。

 

その他の術後合併症について。

実は教科書的に書かれていない、術後に起こりうる合併症もあります。

ここではそれらも術後合併症に含まれるものとして考えたいと思います。

その一部を考えてみます。

 

外科的高血糖

手術には侵襲が付きものです。必ずメスなど身体を切られること、麻酔による侵襲が加わります。

そこでグルカゴンなどストレスホルモンなどの影響で(この辺りは別記事にまとめたいと思います。)糖新生の亢進、糖利用の抑制が起こり、血糖値が上昇してしまうのです。

普段糖尿病ではない患者さんでも起こり得ることです。

糖尿病でもないのに術後に血糖値を測定している場面を見たことはありませんか?

そこにはこの様な術後の血糖値が上がっていないかを見ているのです。

血糖値が高いと、創部の治癒遅延などを起こす可能性が高くなります。

 

では、元々糖尿病を既往に持つ患者さんはどうでしょうか?

糖尿病を持っていない患者さんより、術後の創部観察は非常に重要になる、とピンとくれば素晴らしい観察力です。

 

肺血栓塞栓症(Pulmonary embolism; PE)

深部静脈血栓症 (Deep vein thrombosis; DVT)が術後合併症として挙げられていましたが、さらに重篤になった状態を肺血栓塞栓症と言います。

こちらは非常に危険な状態で、下手をすれば即死に近いくらい重篤な状況になります。

私も手術室看護師時代に何件か遭遇したことがあります。

特に整形外科で脚の手術をした患者さんに多い印象です。私の場合も下肢のプレート抜去の患者さんでした。

みるみるうちにSpO2が下がっていき、その患者さんは亡くなってしまいました。

確かにそんなに多く起こる事ではないと思いますが、〝知っている〟ことで動きも迅速になるし、いぞという時に自分で納得のいく行動が取れるのではないかと思います。

全身麻酔で手術を受ける=すべての術後合併症の可能性がある。

〝全身麻酔で手術を受ける〟
これだけですべての術後合併症の可能性がある、ということを覚えてください。
つまり術後合併症と呼ばれるものはすべて覚えることから始まります。
ただし、術式や患者さんの既往歴などによって術後合併症の起こりやすい所見や頻度が変わってきます
さらに、術直後はすべての術後合併症の可能性があっても、時間を追うごとにどんどんそのリスクが低くなっていく術後合併症もあります。
その〝どんな術後合併症が起こりそうか〟を〝術前から予想する〟ことが非常に重要になってきます。
そして、ある程度予想することができるのです。

術式や既往歴による術後合併症の頻度。

術式による術後合併症の頻度。

手術をする部位、どんな手術を受けたか(術式は何か)によって、起こりやすい術後合併症の頻度が変わります。

つまり、術式を十分に理解することが非常に重要になります。

手術室の看護師は当然ながら、術後の患者さんを看護する病棟の看護師も十分に理解することが必要になります。

 

患者さんの既往歴による術後合併症の頻度。

患者さんがどんな既往歴を持っているかによって術後合併症の頻度に違いが出てきます。

例えば先述した糖尿病の既往歴がある患者さんだった場合、術後に考えられる合併症で起こりそうなことが予測できます。

 

タバコを良く吸っていた患者さんの場合は?

肥満体形の患者さんは?

元々高血圧の患者さんは?

普段飲んでいる内服薬が手術や全身麻酔に及ぼす影響は?

etc...

これらを良く知ることで、ある程度の術後合併症の予測を立てることができて、術後看護にとても自信が持てるようになるのではないでしょうか。

この〝マインド〟があるとないとでは細やかな痒いところに手が届く看護を提供することを非常に左右する要因と考えます。

 

観察するべき優先ポイントが変わってくる。

患者さんの既往と実施した術式を理解することで術後に観察するべき優先ポイントが変わってきます。

例えば、お腹の手術をした患者さんと、脚の骨折の手術をした患者さんでどちらの患者さんが術後イレウスを起こしやすいでしょうか。

答えは前者だと思います。

では脚の手術をした患者さんのDVTの可能性はいかがでしょうか。きっとお腹の手術よりも可能性が高いのではないかと思います。

 

優先ポイントを理解した上で術後観察ができたら、患者さんへの負担も少なくなり、異常の早期発見にも繋がると思います。

ただし、ここで重要なことは優先ポイントを重視するが故にその他の術後合併症を疎かにしてしまう可能性があることです。

つまりその他のポイントを見なくてよい、ということではないのです。

 

あくまでもすべてを網羅した上で、優先すべきところ、特に注目しなければいけない部分があるということです。

 

あっという間に可能性が低くなる術後合併症もある。

全身麻酔をする、ということですべての術後合併症の可能性があると話しました。

しかしながら、術直後からあっという間に可能性が無くなる場合があります。

 

例えば腕の骨折の手術を全身麻酔で受けたとして、術後お腹の音を聞いたらグル音がしっかり聞こえる、さらに術後1日目にすぐに歩いてトイレに行けるなどの条件が揃ったら、術後のイレウスの可能性はかなり低いと考えます。

その状況でいつまでも入念にお腹の音ばかり聞いていたらあまり効果的な術後観察にはならなそうです。

ただ、まったく考えないのも違うと思います。例えばお腹の調子を聞いてみる、食事をちゃんと食べれているか観察するなど注目してみても良いかと思います。

 

 例えばこんな場合は?

普段から喫煙している患者さんは?

術前からタバコを吸っている人は術後合併症にどの様な影響があるでしょうか。

タバコの影響は看護学校でも習ったことがあるかとも思います。

つまりはシンプルに術後の呼吸器合併症の可能性は吸わない人よりも大きくなるでしょう。

タバコに限らず、閉塞性の呼吸器疾患を患っている方などは術後に限らず術中の全身麻酔を受ける上でも大きな影響を受けると考えられます。

さらにそれにより酸素消費量が増加し、ちょっと行き過ぎかもしれませんが創部の治癒遅延にも若干影響しそうです。

呼吸器合併症のリスクは格段に上がることが予想されます。

 

糖尿病の既往はある患者さんは?

こちらは先述しました。

ただでさえ外科的高血糖によって血糖値が上がりやすい状況の中、糖尿病を患っている方はさらに血糖値が上がる可能性があります。

血糖値が上がるということは創部の治癒遅延に繋がります。

皮膚が元々弱い可能性もあります。

 

低栄養の患者さんやBMIが高い患者さんは?

術前の検査によって低栄養がある患者さん、またはBMIが正常より高かった場合はどうでしょうか。

低栄養状態ということは免疫力の低下が考えられます。

つまりこちらも感染症や創部の治癒遅延に繋がる可能性があります。

 

またBMIが高い方はどうでしょうか。

体位によっては発赤や褥瘡の可能性が高くなります。

 

これらの既往歴だけでなく様々な角度から術後合併症にどの様な影響があるかアセスメントする必要があるのです。

 

まとめ

術後合併症に影響を与える因子。

・患者の既往歴

・患者の生活背景(喫煙,飲酒など)

・患者の状態(低栄養状態,BMI高値など)

・術式や手術の内容                など

これらに注目し、しっかりアセスメントすることで注目すべき術後合併症のポイントが変わります。

ただし、注目ポイントだけ観察すれば良い、ということではなく、すべてを網羅しながら日々変わりゆく患者さんの状態を観察してその時の優先ポイントを見極めることが重要です。

 

いかがでしたでしょうか。

何か分かりにくい文章がありましたら教えてください。

それぞれの術後合併症の看護についてはこれから少しづつ書いていこうかと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。